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 来月4日召集の臨時国会を前に、自民党が改憲論議に臨む新たな体制を固めた。安倍首相は原案作成を目標に掲げるが、改憲ありきでは、与野党の対立をあおり、冷静な議論にはつながらないと心得るべきだ。

 首相は先の内閣改造後の記者会見で、衆参両院の憲法審査会において、今後は「自民党が強いリーダーシップを発揮していくべきだ」と語った。この2年間、衆院憲法審で実質審議が一度も行われなかったことに業を煮やしたのだろう。

 党憲法改正推進本部長には、首相の出身派閥の長で、自衛隊明記など改憲4項目をまとめた細田博之・元幹事長を再び起用。憲法審の会長には、衆院は佐藤勉・元国会対策委員長、参院は林芳正・元文部科学相を充てる。野党とのパイプや交渉力に重きをおいた布陣といえる。

 ただ、これまで憲法論議が進まなかったのは、改憲に前のめりな首相の姿勢や、野党を挑発するような首相側近の不用意な言動が原因ではなかったか。その根本を改めずに、野党との駆け引きに心を砕いても、実のある議論は期待できない。

 首相は改憲論議の是非を訴えた今夏の参院選に勝利したことで、「議論すべきだとの国民の審判は下った」と繰り返す。

 しかし、同時に、自民、公明の与党に日本維新の会などを加えた「改憲勢力」が、国会発議に必要な3分の2を維持できなかったことも重く受け止めるべきだろう。公明党の山口那津男代表が選挙直後、「憲法改正を議論すべきだと受け取るのは、少し強引だ」と指摘したのはもっともである。

 そもそも、内外の課題が山積しているというのに、政権党の政治エネルギーを改憲に注ぐ緊急性や必然性がどれだけあるのか。朝日新聞の世論調査によると、改憲を求める声は一貫して小さい。党総裁の任期が残り2年となるなか、政権の「遺産」づくりという思いが先立つなら、本末転倒というほかない。

 安倍政権は集団的自衛権の行使に道を開いた安全保障関連法など、世論の割れるテーマで熟議を拒み、最後は「数の力」で押し切る国会運営を繰り返してきた。衆院憲法審の会長となる佐藤氏は安保法成立を強行した時の国対委員長だ。自民党内には早くも「改憲論議は(憲法審の)会長職権で進めるしかない」との声がある。

 改憲ありきではなく、国のあり方をめぐって大所高所から議員同士が闊達(かったつ)な議論を交わす。その環境を整える責任こそ自民党にある。通常の法案以上に丁寧で幅広い合意形成が求められる憲法論議を数の力で推し進めることなどあってはならない。

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