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 いよいよ10月から「幼児教育・保育の無償化」が始まります。子育て世帯の経済的負担を和らげるものですが、待機児童解消や保育士の賃上げなど、財源を他のことに使うべきだという声も。朝日新聞デジタルのアンケートでは、反対が賛成を上回りました。皆さんはどう考えますか?

 ■「社会で子育て」は賛成/してほしいが待機児童解消が先

 朝日新聞デジタルのアンケートに寄せられたご意見を紹介します。

 ●どちらかと言えば賛成

 正直助かります。(福岡県・40代男性)

 これまでの施策は高齢者や介護などに向けられるものが多かったので、やっと子どもや子育て世代全体への福祉の充実が見直されてきたのは良い傾向。これからの日本を支える若い世代が明るく希望に満ちた未来を描けるように福祉の充実を願う。(千葉県・30代女性)

 都市部と地方、共働きと専業主婦世帯、対立を生まずにすべて無償化することには一定の理があると考えます。また、無償化=子育て世代への予算重点配分にすることで、結果的に、「社会で子育てしていく」世論が形成されていくだろうと考えるため、どちらかといえば賛成です。(東京都・30代女性)

 ●入れない状況何とかして

 現在育休中で下の子の保活に追われる日々です。認可保育園は増えているようですが区役所ではかなり難しいといわれ、認可外をあたっても認可との併願は禁止としているところばかり。認可外への申し込みは説明会への参加が必須とされていますが、説明会参加自体キャンセル待ち180番目と案内されるなど、そもそもがんばりようがない状態です。(神奈川県・30代女性)

 ●3歳からでは遅い

 3歳からでは遅すぎる。働きに出たくても保育料もかかるし保育園も入れなくて働けないお母さんたちがとても多い。待機児童を解消し、1歳からにするべき。(北海道・30代女性)

 0~2歳児も、全世帯無償にしてほしい! 出産代から始まり、ベビーベッドにベビーカー、抱っこひも、ベビーチェア、洋服にオムツ代、ミルク代、哺乳瓶、子どもが生まれてすぐに、びっくりするくらいお金がかかります。(東京都・30代女性)

 ●今までより負担重く

 無償化で園への支払額が値上がりしました。無償化とは何だったのでしょう? 今回のやり方はごく一部しか得をしないひどいやり方でした。(長崎県・30代女性)

 ●園が値上げ

 幼稚園が無償化によって教育費を大幅に値上げした。結果今までより負担増か変わらない結果に。(大阪府・40代女性)

 ●現場の声聞いて

 保育士です。現場は正直、無償化をあまり歓迎していないと感じています。保育士の働く環境は、あまり良いとは言えません。特に給与やサービス残業、持ち帰り仕事など、改善出来ていないことばかりです。人手も足りていないなかで無償化が決まり、定員を増やさなければ待機児童があふれてしまう。すでにそんな状況です。もっと現場の声にも耳を傾けて欲しかったです。(熊本県・40代女性)

 ●保育士の待遇改善こそ

 保育士資格は持っていますが、保育士として働いていません。「保育士の賃金アップを優先すべき」に尽きると思います。保育士による虐待や暴力のニュースが相次ぎましたが、低賃金なのに親の要望が多くストレス過多なので、言い方は悪いですが分からなくもありません。(東京都・40代女性)

 ●不公平感しかない

 幼児子育てをとっくに終えた私たち世代にとっては消費税増税分をこんなことに使われると不公平感しかない。皆、高い保育料を払い必死で子育てしてきた。今の子育て世代にできないことではない。(東京都・50代女性)

 ■就学後に備え「貯金したい」

 「無償化で浮いたお金は、子どものために貯金したい」。東京都練馬区で2児を育てる会社員の女性(33)は、今回の無償化策を歓迎します。認可保育園に通う長男(5)の保育料は10月から無料、長女(2)も、来年4月から対象に。

 心配なのは、子どもが小学校に入学した後のこと。基本月額5500円で利用できる区立の学童クラブを希望していますが、今年4月時点で待機児童は計366人。民間事業者が設置する学童に通うとなると、月6万円前後が家計にのしかかります。「今のうちに負担が少しでも減るのはありがたい」と話します。

 奈良県三郷町で昨年8月に長女を出産した公務員の広川絵里子さん(33)も、前向きに受けとめます。「これまで中間所得層以上への支援策が乏しいと感じていました。所得で区切らず、全員を対象とした無償化策には賛成です」

 ただ、無償化だけでは子育て世帯の負担軽減は不十分と感じるそうです。町内の今年4月時点での待機児童は「0人」でしたが、広川さんが6月に役所に相談に行くと「年度途中での入園はほぼ無理。来年4月も入れるかわからない」と言われました。慌てて育児休業給付金の支給延長を申請しようとしましたが、必要な手続きの申請は3日前に締め切られていました。「待機児童ゼロと聞くといつでも保育園に入れるような印象を受けますが、現実は違いました。支援策の有無は子育て世帯の生活に直結します。行政は、もっと実態に合ったきめ細かな情報提供をすべきです」

 ■入園できないと恩恵なし

 東京都中央区で双子の2歳の男児と0歳の三男を育てる女性(32)は、1年半以上続く「保活」に疲れ切っています。元々は正社員として都内の企業で働いていましたが、夫の転勤で退職。昨年都内に戻り、もう一度働くつもりが、保育園に空きはありませんでした。

 今年4月には区内の企業主導型保育所に双子の息子を預けることができました。でも、2歳児クラスまでしかなく、来年4月以降のあてはありません。1月生まれの三男は、ここにも入れませんでした。

 保育園の利用は、専業主婦よりも共働き世帯が優先されます。女性は以前の勤め先から「いつでも戻ってきて」と声をかけられていたのに、保育園が見つからないために、復帰を先送りせざるを得ませんでした。

 女性は会社と交渉し、週3日のみの勤務を認めてもらった上で、10月から区の一時預かり事業を利用して働くことにしました。ただ、1カ月おきに先着順で受け付けるため、確実に利用できるかは分かりません。利用料は1時間800円、週3日でも月6万円近い出費となります。

 女性は今後、待機児童が少ない別の区に引っ越し、3人が安定的に通える保育園を探すつもりです。これまで、区役所には情報収集や手続きのために10回以上も足を運びました。保活に伴う出費や労力は、予想以上の負担でした。

 無償化について女性は「保育園を利用できる人は働いて収入が得られる上に、保育料まで無償になる。働きたくても働けない人との格差が広がることをどう考えるのか。施設を増やしたり、手続きを電子化して保護者の負担を減らしたりするなど、ほかにやるべきことがあるのでは」と話しています。

 ■主に地方でメリット 柴田悠・京都大学大学院准教授(社会学)

 今回の「無償化」には数々の課題がありますが、一定の意義もあります。一つ目は児童虐待の防止、二つ目は女性の活躍と人手不足の緩和につながることです。

 無償化で、保育料の負担がネックで保育園に入れることをためらっていた親が、子どもを預けやすくなります。子どもは保育園で適切な保育を受けることができ、親はその間に働いて収入を得られます。生活にゆとりができ、親子が離れて過ごすことで心身の余裕も生まれます。子育てのプロである第三者が日々子どもに関わることも、虐待のリスクの低減につながります。

 保育料の負担が軽くなれば、「せっかく働いて収入を得ても、保育料で消えてしまう」という状況が改善されます。ならば短時間しか預けられない幼稚園より、長時間預けられる保育園やこども園に入れて仕事を始めよう、と考える人もいるでしょう。実際に、保育園などを利用していない1歳児の保護者を対象にした岡山市のアンケートでは、無償化によって、4歳児時点の幼稚園の利用希望者が3割減る一方で、認可保育園の希望者は2割増える見込みとなりました。子育て中の人が仕事に就きやすくなることは、経済的な自立やキャリアの形成に、社会的には人手不足の緩和につながると考えます。

 ただし、いずれも保育園の受け入れ人数に余裕がある地方に限り、待機児童の多い地域では効果は見込めません。無償化の意義は入園できた家庭の経済的負担が減ることだけで、むしろ待機児童の増加、保育の質の悪化などデメリットが大きくなるでしょう。(聞き手・栗田優美)

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 しばた・はるか 1978年生まれ。著書に「子育て支援が日本を救う 政策効果の統計分析」など。

 ■世帯間の格差、広がる 宮本太郎・中央大学教授(政治学)

 幼児教育・保育の無償化が、子育て世帯間の格差を一層広げてしまうことを懸念しています。

 女性の社会進出が進むにつれ、高所得者同士が結婚する「同類婚」が増えました。一方、非正規で働く女性の割合は高止まりするなど、低所得世帯との二極化が生じています。

 そうした中、自治体による認可保育施設の入園選考は、勤務時間が長いフルタイムの正規雇用者同士の夫婦が、パートタイムでの就労や求職中の場合より優先される傾向にあります。所得の低い世帯が、認可施設の利用に結びつきにくい構図です。

 それでも、これまでは所得に応じて、高所得者ほど高い保育料を払ってきました。ここで一気に所得制限なしの無償化に踏み切れば、格差が解消されないばかりか、高所得者ほど大きな恩恵を受けることになります。

 現役世代が数の上で減少していくなか、生まれた家庭の経済状況を問わず、誰もが超高齢社会を支える力を発揮できることが重要です。そのためには、就学前から質の高い保育・幼児教育を受けることが不可欠です。政府も約束している保育士の配置人数の増加や、保育士の処遇改善は急務です。

 ところが、国の財政収支が改善されないなかでの無償化で、保育の質のための財源を制約することにもなりかねません。これから子どもの数が減れば、待機児童も自動的に解消されますが、その先、少ない数で国を担う子どもたちの育ちをどう支えるか。政治は、子ども子育て支援に必要な政策の優先順位を見極めるリテラシー(知識・判断力)を養うべきです。(聞き手・伊藤舞虹)

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 みやもと・たろう 1958年生まれ。政府の社会保障審議会委員などを務める。著書に「共生保障 〈支え合い〉の戦略」など。

 ■財源は増税分8千億円

 無償化に必要な年約8千億円の財源は、無償化と同時に行われる消費増税による増収分の一部でまかなわれる。もとは国の借金返済に充てられるお金だったが、安倍晋三首相が2017年の衆院選で使い道を変えて無償化に振り向けることを表明、今年5月に関連法が成立した。

 「子育てや教育にお金がかかりすぎる」。国立社会保障・人口問題研究所が15年に実施した調査では、理想通りの子どもの人数を持てない夫婦が挙げた最大の理由が子育てにかかる経済的負担の重さだった。無償化は、こうした夫婦の負担感を和らげる狙いがある。

 一方、認可保育施設などに入れない待機児童の数は今年4月時点でも1万6772人。特定の保育園を希望しているなどとされ、待機児童にカウントされない「隠れ待機児童」も8万394人にのぼり、依然解消されていない。保育園の中には、必要な保育士数が確保できずに子どもの受け入れ人数を減らした園もある。保育の量にも質にも直結する保育士の処遇改善を求める声は、一層強まっている。

 ◇来週10月6日は「幼保無償化:2」を掲載します。

 ◇幼児教育・保育の無償化について、あなたはどう考えますか。制度への疑問、期待、子育てをめぐる負担について、引き続き意見を募集します。asahi_forum@asahi.comメールするへ。アンケート「『イクメン』どう思う?」もhttps://www.asahi.com/opinion/forum/で実施中です。

 

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