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 地球温暖化にともなって、近年、海面が上昇するペースが加速している――。そんな特別報告書を、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)がまとめた。

 温室効果ガスの排出を減らさないと、高潮などの災害や漁業の不振が深刻になり、命や暮らしが脅かされる恐れが大きくなるという。四方を海に囲まれた日本は、強い危機感をもって対策を急ぐべきだ。

 IPCCは世界の科学者でつくる組織で、温暖化について総合的に分析している。今回の特別報告書は「海洋・雪氷圏」にテーマを絞り、日本を含む36カ国の専門家104人が約7千の科学論文を精査した。

 いわば、科学にもとづく現状分析と将来予測である。いまそこに気候変動の深刻な危機があるという事実から、目を背けてはならない。

 特別報告書によると、世界の平均海面は20世紀の初頭から現在までに16センチほど上昇した。近年、かつての2・5倍ものペースに加速し、毎年3・6ミリずつ上がっている。

 IPCCは「温暖化で南極やグリーンランドなどで氷のとける量が増え、水温の上昇にともなって海水が膨張していることが背景にある」という。

 温暖化対策の国際ルール・パリ協定にもとづき、産業革命以降の気温上昇を2度未満に抑えたとしても、今世紀末の海面上昇は最大59センチになる。対策をとらないまま温室効果ガスの排出が増え続ければ、世界の海面は最大1・1メートルほど上昇する恐れがあるとしている。

 影響は深刻である。

 100年に1度の記録的な高潮が今世紀半ばには、標高の低い都市や島国など毎年どこかで起きるようになる。温暖化で台風が強まるとの予測もあり、沿岸部に都市が連なる日本にとって人ごとではない。

 海水温の上昇や、二酸化炭素を吸収することによる海水の酸性化が進めば、海の生態系への打撃も避けられない。特別報告書によると、何も対策をとらないと海の動物は今世紀末に15%も減り、漁獲量は20~24%ほど落ち込む恐れがある。

 国連の気候行動サミットで多くの国々が対策強化を約束したが、温室効果ガスの排出が多い中国や米国、日本などは動きが鈍かった。主要排出国は率先して削減に努めてもらいたい。

 そうした緩和策の効果が出るまでには時間がかかる。防潮堤や土地のかさあげなど、海面上昇への備えを万全にする適応策も忘れてはならない。

 南太平洋などには、水没の恐れがある小さな島国もある。日本は支援に尽くしたい。

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