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 消費税の税率が5年半ぶりに上がり、10%になった。

 当初は2015年10月の予定だったが、安倍首相が2度先送りした。今回は、2%分の増税で景気の足を引っ張らないことを最優先に、国の増収分を上回る2兆円規模の対策を積んだ。

 ■本来の目的はどこに

 キャッシュレスでの買い物への9カ月間のポイント還元策では、店によっては増税分より多い5%分のポイントをつける。子育て世帯などには、25%分のプレミアムがついた商品券も出す。防災・減災という名の公共事業も入った。

 税率を上げた直後の景気が落ち込んだ過去の「反省」が大きく、対策のねらいや効果の検討は二の次となった。増収分の使い道も見直し、保育所や幼稚園の無償化などに回した。

 負担増を求めながら、目先の景気や日々のくらしでのお得感を強調する。一方、首相がほとんど説明しないことがある。

 なぜ増税をするのか、だ。

 消費税は、年金、医療、介護と子ども・子育てに使う税金だ。こうした社会保障の給付は保険料や税金で支え、足りない分は国債という借金で埋め合わせている。今回の増税のもともとの目的には、この将来世代に対する負担の押しつけを、できるだけ減らすことがある。いまの現役世代への支援を手厚くする分、首相はここを削り、使い道の半分に抑えた。

 消費税が始まった30年前、1割強だった高齢化率は、いま3割近く、団塊ジュニア世代がすべて75歳以上になる30年後は4割近くになる。社会保障の給付費は、30年前の45兆円がいまは123・7兆円。医療や介護を必要とする高齢者が増えれば、この先はさらに伸びる。

 一方、制度を支える働き手となる年齢層の割合は、30年前の7割が6割に減り、30年後には5割まで落ち込む。

 労働力も納税者も減る時代が迫るなか、低金利を前提とした借金頼みのままでは、だれもが人生のどこかで必ずかかわる社会保障制度は、持続可能とは言えない。将来にわたって給付と負担のバランスをとり、社会の支え合いの機能を高めていかねばならない。

 ■必要な再分配の視点

 まず、どんな社会保障のメニューをだれにどう届けるのか。どこまでを「自助」や地域の力に頼り、国や自治体にしかできない「公助」で何を支えるのか、議論する必要がある。

 同時に、どのくらいの経済成長が続けば負担増は避けられるのか、避けられないとすれば、給付を支える負担のしくみはどのような形が望ましいのか、考えることが求められる。

 10%になった消費税は、国に入る税収だけで来年度は20兆円を超える見通しで、所得税と並ぶ柱だ。ただ、所得の低い人の負担感が大きい税でもある。今回、食品と定期購読の新聞の税率を8%のままにする軽減税率が初めて入ったのも、そのことへの配慮という面がある。

 急増する社会保障給付などの公共サービスを続けていくには、景気の影響を受けにくく、安定した税収のある消費税は欠かせない。しかし同時に、所得や資産が少ない人への配慮、すなわち「再分配」の視点を忘れないようにするべきだ。

 日本の社会は少子高齢化とともに、格差の広がりにも直面する。所得税や相続税の引き上げなど、税の再分配機能を高める改革は避けられない。新しい時代にふさわしい社会保障と税制の姿を描く議論を、急ぎたい。

 ■選択肢を示し議論を

 「高齢化社会という新しい時代に耐える税」

 30年前、創設が決まった消費税を、安倍晋太郎・自民党幹事長はこう表現した。竹下登首相は「やがて『導入してよかった』と感じていただける日が来ることを信じております」と国民に呼びかけた。

 現役を終えた世代にも、消費を通じて、広く担い手となってもらう期待を込めた。

 しかし、すべての消費者に目に見える形で負担を求める税だけに、国民の拒否感は強い。政治家は選挙を意識し、財政が厳しい状況にあっても、増税の話は遠ざけがちだ。

 安倍首相もいま、「今後10年間くらいは消費税を上げる必要はない」と、負担増の議論を封印している。

 だが、今回の10%は7年前、野党だった自民党と公明党が民主党政権へ歩み寄り、踏み出した一歩ではなかったか。当時は社会保障の姿と併せて意見を交わし、理解を得ようと国民への説明をいとわなかった。

 社会保障の将来に対する国民の不安は強い。だからこそ、給付と負担の選択肢を組み合わせて議論を重ね、国民の納得感を高めたうえで、改革を進めていく責任が政治にはある。

 将来へも目配りし、世代を超えて支え合う社会へ。

 消費税率が10%になったからと、議論を封印している余裕はない。高齢化も少子化も、立ち止まってはくれない。

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