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 1日に始まった幼児教育・保育の無償化。保育園や幼稚園の利用料負担は軽減されましたが、子育て中の保護者はいま、どんなことに悩んでいるのでしょう。朝日新聞デジタルのアンケートでは、お金の問題だけではない保護者の負担が見えてきました。本当に必要な子育て支援とは――?

 ■もっと寛容な社会に

 子育ての負担を和らげるために、どんな支援があったらいいでしょうか? アンケートに寄せられた声をご紹介します。

 ●地域でつながりたい

 子ども同士、かつ親同士、地域の人々がコミュニケーションをとれる安全な遊び場、集いの場が増えれば良い。あと、いざという時に限らず、親がリラックスして出かけたいときに、安全に子どもを預けられる施設を充実させてほしい。(沖縄県・30代女性)

 ●子育てに寛容な社会に

 世間の目が厳しく感じ、それが子育てをしていてとても負担に感じてしまう。子育て世代にもっと寛容な社会になってほしい。(東京都・30代女性)

 ●「産んで当然」押しつけないで

 そもそも子育ては素晴らしいとか、結婚したら子どもは産んで当然とか、そういう考えを捨ててほしい。子どもを産んでしまったら自己責任地獄。親になっても親に甘えて仕事、子育てできる人だけが産めば十分。(埼玉県・20代女性)

 ●会社の無理解断ち切るべきだ

 会社が子育て世帯への理解を深めてほしい。子どもが生まれたら今まで通り働けなくなるのは当たり前なのに評価を不当に下げられるのは大変不愉快です。子どもが生まれた社員は強制的に半年間出社しないで子育てに関わるような仕組みをつくるようにしなければ、いつまでたっても上の人たちの理解が得られない負のループから抜け出せない。(静岡県・40代男性)

 ●親の心もケアが必要

 子どもの健診の時に、親のカウンセリングもしてほしかった。大きな虐待があると判断できない限り人員を割けないのだろうと思ったが、長く精神的なつらさが続いた。(大阪府・30代女性)

 ●子の数に応じて負担軽減を

 所得制限が議論されるが、同じ年収1千万円でも子ども1人と3人では負担がまったく違うので、単なる年収ではなく子どもの人数が増えるごとに支援が増えるようにしてほしい。(神奈川県・40代男性)

 ●学費支援は大学まで視野に

 一定の条件をクリアすれば義務教育~大学までの学費が免除されるなど金銭面の負担が減るとありがたい。(埼玉県・20代男性)

 ●塾通い前提の仕組み変えて

 通塾の費用が家計に占める割合が多い。塾代がなければ貯蓄できる家庭も多いのでは? 学習塾に行かないと良い高校、大学に行けない状況に疑問を感じる。公立の小中学校の授業をきちんと受けていれば、希望する学校に進学できるシステムにしてほしい。(神奈川県・50代女性)

 ■「地域のため」楽しんで協力

 アンケートには、地域ぐるみで子どもを育むことを期待する声も寄せられました。千葉県松戸市に「地域で子育て」を実践する人がいます。

 「スーパーじいじ、こんにちは!」。平日の夕方、尾崎明さん(72)宅の庭に、小学4年生の2人が駆け込んで来ました。玄関脇の黄色い旗が「入っていいよ」の目印。習い事に行くまでの間、2人は大木に取り付けたブランコに乗ったり、おやつを食べたり。庭にはサッカーやバスケットボールのゴール、バドミントンのネットもあります。

 メーカーに勤めていた尾崎さんは現役時代、家と会社を往復するだけの毎日でした。娘2人の学校行事にも行ったことがなく、子育ては妻に任せきり。定年が近づいた時、妻に「地域のために何かしたら」と言われました。

 まずは近くの交差点で登校時の見守りをしてみました。毎朝立つうちに顔見知りが増えました。「『今日は元気ねえなぁ』なんて声をかけることもあるし、逆に僕がいないと『二日酔い?』と聞かれたり。ふれあううち、もっと何かできそうだと考えるようになりました」

 そこで始めたのが、畑で育てた野菜を使った料理教室です。小中学生15人ほどが集まり、調理後は毎回テーマを決めて話をします。例えば沖縄料理の回には沖縄戦のこと。学校でも家でも話す機会がなさそうな話題を選びます。「僕らは親や先生とは違う視点で接することができるし、いろんな大人に出会うのも経験なのかな、と思ってね」

 同年代の人に話すと「よその子に何かあったら……」と尻込みされます。「それを言ったら何もできないでしょ。無理なく、自分が楽しいと思うことをする。僕は、今が人生で一番輝いていると思っています」

 ■育児インフラにお金を エッセイスト・犬山紙子さん

 昨年からタレントチームで「#こどものいのちはこどものもの」という児童虐待を防ぐ活動をしています。ネットを通じた寄付などで、施設や親を支える取り組みを応援しています。

 一人で子育てしている人からは、虐待は「ひとごとじゃない」という声も寄せられます。睡眠は足りず、自分の時間も持てない状況では、追い詰められて当然。大事なのは、一人で抱え込まないことです。希望する全員が保育園に入れて、ベビーシッターなどのサービスも使いやすい仕組みになるよう政治がお金をかけてほしい。本当にお金がかかる0~2歳も幼保無償化の対象にするべきです。

 心が傷ついた時、疲れてしまった時の対処はほとんどの人が教わっていないし、情報も足りません。私は、怒りっぽい自分を娘に見せたくなくて、カウンセリングを受け、とてもよい経験になりました。でも、心療内科やカウンセリングはハードルが高いし、費用もかかる。心が傷ついた時、早い段階でお金の心配をせずに専門家のケアを受けられたら、と思います。

 子育ては、一人で抱えてしまうとしんどいけど、たくさんの大人ですれば、こんなにすてきなことはありません。育児のインフラが早く整うようにと心底願っています。

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 いぬやま・かみこ 1981年生まれ。女性の生き方をテーマにしたエッセー多数。情報番組のコメンテーターも務める。2歳の娘がいる。

 ■ママをやめる時間必要 映画監督・豪田トモさん

 「ママをやめてもいいですか!?」という映画を来年2月の公開に向けて製作しています。育児に奮闘するママとパパたちの姿を追いました。産後うつの問題でママたちに会ううちに、「子どもたちのためにも、この過酷な現状を映画にしなければ」と思いました。笑顔で明るく過ごしているように見えて、よく聞くと、孤独感を抱え、理想と現実のギャップに引き裂かれていました。僕も小学3年生の娘がいますが、孤独のつらさは想像以上でした。

 「ママをやめたいと思ったことがあるか」と約400人にアンケートをしました。「毎日のようにある」「たまにある」「前に思ったことがある」という人が計77%に上りました。どんな仕事でも24時間休みなく働くことはありません。時折ママをやめて、リラックスしたり、刺激を受けたりする時間があった方がいい。産後に使えるケアハウスもありますが、数が少なく、費用の助成も自治体によります。子育ては約20年続きます。長期間にわたって頼れる親子のケアハウスや、逆に家に来てもらうサービスも必要です。

 元気に生まれてくれるのか、仕事との両立は、夫婦関係は……。子育ての心配は妊娠期から山ほどあるのに、受け止めてもらえていない。僕は学校で「育てる」を必修科目にしたらいいとさえ思っています。

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 ごうだ・とも 1973年生まれ。会社員を経て、29歳からカナダで映画製作を学ぶ。2010年「うまれる」でデビュー。

 ■子育てに冷たい社会、誰も得しない 前田正子・甲南大教授(社会保障論)の話

 今は支援やサービスが整っているように見えますが、核家族化が進んで地域とのつながりも希薄化し、「制度にならない助け合い」が消えつつあります。孤独な子育てを強いられる親が増えています。

 子どもを近所の家で預かってもらったり、同居する親の手を借りたりといった関係性をつくるのは、特に都市部では難しい。

 仕事との両立で悩む親も少なくありません。2017年に立教大の安藤道人准教授らと共同で、ある大都市圏の自治体の保護者を対象に調査をしたところ、「短時間勤務で嫌みを言われる」「子どもが病気で休む度に肩身が狭く、働きづらい」などと、職場の理解の乏しさを訴える声が数多く寄せられました。

 そこに追い打ちをかけるように、外出先で子どもが騒いだら舌打ちをされてしまった、といった経験を多くの親がしています。

 でも、考えてみてください。いつか老いて医療や介護が必要になったとき、あなたの面倒をみてくれるのはその子かもしれません。このまま少子高齢化が進み、現役人口が減っていったら、そんな当たり前のケアを受ける環境すら整わなくなってしまうかもしれません。子育てに冷たい社会で得をする人は誰もいません。せめて温かい目で、親子を見守っていきませんか。

 ◇アンケートでは、職員の処遇改善を求める声が保護者からも届きました。賃金構造基本統計調査で保育士の昨年6月の平均月給は23万9千円、幼稚園教諭は24万1千円。全産業平均を10万円近く下回ります。

 埼玉県内の認可保育園ではこの春、低賃金や雇用環境が原因で園長を含む11人の職員が一斉に辞めてしまいました。4歳の娘を預ける母親は「ベテランの先生方がいなくなり、年度当初は日中の子どもの様子を尋ねても『わかりません』と言われたことも。無償化より、保育士が安定して働ける環境を整えてほしい」と言います。

 保護者が求めるのは、単に子どもを預かってくれる「施設」ではありません。一人ひとり違う子どもの個性に心を配り、発達を支援してくれるプロの職員が必要です。しかし、現状ではそのための環境が十分整っているとは言えません。無償化に8千億円をつぎ込む前にやるべきことは何か。考え直すべきでしょう。(伊藤舞虹)

 ◇「子育てにお金がかかる」を最初に実感したのは、子どもが乳幼児の時です。ベビー用品、服、絵本などでどんどん貯金が減っていきました。高校受験を迎え、今さらながら、この先の教育費におののいています。

 文部科学省、日本学生支援機構それぞれの調査(2016年度)によると、高校と大学の学費は両方私立なら計860万円。公立でも400万円ほど。大学で下宿する場合の生活費はこれとは別です。国公立大学の学費も、OECD加盟36カ国の中で4番目に高い。公費支出が少なく、「極めて大きな負担を学生並びに家族に強いている」と指摘されています。

 今回のアンケートでも「本当にお金がかかる高校、大学の負担減を」という声がいくつも寄せられました。真剣に少子化を憂えるなら、3~5歳の無償化という小手先の対処ではなく、子育ての負担を徹底的に洗い出し、根本から議論した方がいいと思います。(栗田優美)

 ◇来週13日は「イクメンどう思う?:1」を掲載します。

 ◇アンケート「『イクメン』どう思う?」をhttps://www.asahi.com/opinion/forum/で実施中です。ご意見ご感想はasahi_forum@asahi.comメールするへ。

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