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 米国とイランの対立が続くなか、自衛隊の派遣は、緊張緩和に向けた外交努力に逆行しかねず、賛同できない。

 安倍政権が、中東海域での船舶の安全確保のため、自衛隊の独自派遣の検討に入った。米国が主導する「有志連合」への参加は見送る。

 中東への関与で米国の顔をたてる一方、イランとの関係悪化を避けるための苦肉の策なのだろう。活動範囲もホルムズ海峡やペルシャ湾を避けており、イランへの刺激を避けようとする狙いはわかる。

 安倍首相は6月にイランを訪問し、9月の国連総会では米、イラン双方と首脳会談を行うなど、仲介外交を続けてきた。朝日新聞は社説で、こうした努力を支持してきた。

 その道半ばで、軍事的対応に一歩踏み出すことは、危うい選択である。有志連合には参加しないというが、米国との「緊密な連携」も掲げており、イラン側にどう映るかは不透明な部分がある。偶発的な衝突のおそれもぬぐえない。

 派遣の必要性と根拠にも疑問がある。菅官房長官は記者会見で「ただちに我が国に関係する船舶の防護を実施する状況にはない」と述べ、現時点では自衛隊による護衛が求められる情勢にはないと認めている。

 政府が名目としたのが、情報収集態勢の強化だ。防衛省の所掌事務を列挙した防衛省設置法4条の「調査・研究」に基づくというが、日本をはるか離れ、緊張下にある中東への派遣の根拠たりうるのか。拡大解釈と言わざるをえない。

 この規定による自衛隊派遣には国会承認が不要である。01年の米同時多発テロ後に、海上自衛隊の護衛艦が米空母を警護した際や、テロ対策特別措置法に基づく活動の前に護衛艦をインド洋に先行派遣した際も根拠とされた。国会のチェックなしに政府が自衛隊を動かす道具になっているのが実情だ。

 情報収集が目的で、日本関係船舶の護衛はできないが、必要が生じれば、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令して守ることもあり得る。いったん派遣すれば、軍事衝突が発生しても後戻りするのは難しい。

 そもそも緊張の発端は、トランプ政権が昨年、イランの核開発を制限する多国間の合意から一方的に離脱したことにある。事態を打開するためには、米国がこれまでの対応を改めることが決定的に重要だ。

 いま日本がなすべきは、自衛隊の派遣ではない。仲介者としての立場を堅持し、イランに自制を促すとともに、核合意に戻るよう、米政権に粘り強く働きかけることである。

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