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 英国はまたも、決められなかった。欧州連合(EU)からの離脱を定めた協定案について、英議会は採決を見送った。

 面目がつぶれたジョンソン首相のその後の行動が、この国の迷走ぶりを示している。EUに離脱の延期を求める書簡を送るとともに、延期は良くないとする自署入りの書簡を添えた。

 こんな矛盾した要請を受け取ったEU側に不満が募るのは無理もない。2016年の国民投票から続く英国の独りよがりのために、欧州が抱える財政改革や移民対策などの課題に全力を注げない事態が続いている。

 だとしてもEUには3度目の離脱延期を認めてもらいたい。今回の英議会の行動からは、唯一の合意点がより鮮明に見えてきた。それは、離脱への賛否を問わず、無秩序な離脱を望んでいないということだ。

 ドイツやフランスなどEU側も同じ考えだろう。ここは欧州統合の歴史に深い禍根を残さないためにも、英国に猶予を与える寛容さを見せてほしい。

 ジョンソン首相は今もなお、今月末での離脱に執念をみせている。しかし、議会を勝手に閉会に持ち込もうとするなど強引な手法を見せるにつれ、行政府の独断への懸念と反発が高まってきた。

 ジョンソン政権は、まだ一度も選挙で民意を問うたことがない。保守党内の手続きで前政権を引き継いだ後、離党や造反が相次ぎ、いまでは少数政権だ。閣外協力している北アイルランドの政党も今回、首相に背を向けて採決延期に回った。

 この状況で首相が「延期するなら、のたれ死んだほうがましだ」と強弁しても、共感を集められないのは当然だろう。

 首相は、離脱をめぐる長い騒動への国民の疲労感を追い風に考えている節もうかがえるが、英国と欧州の未来が問われている重大な岐路にあることを忘れてはならない。

 離脱期限に追われながら、ジョンソン政権がいまの政治基盤のままで合意をまとめようとするのには無理がある。少なくともいずれかの時期に、総選挙で民意を問うてから改めて離脱の論議をすすめるべきだ。

 今回の採決先送りが決まったとき、英議事堂の外では、再度の国民投票を求める何万人もの国民が集まっていた。仮に協定案が議会で可決された場合も、「確認のための国民投票」をしてほしいとの声もある。

 前回の国民投票から3年。当時は知り得なかったさまざまな現実がわかり、個々の人びとの考えに変化が生まれたのは否めない。ジョンソン政権は、総選挙のみならず、再度の国民投票も考慮すべきではないか。

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