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 適切な危機意識をもって動いていれば、この事態は十分に防げたのではないか。

 台風19号の雨で千曲川の堤防が決壊した長野市で、JR東日本の車両基地にあった北陸新幹線120両が水没した。すべて廃車となると損害は300億円を超す。同社は早期復旧に取り組むとともに、どう対応すればよかったか、検証して再発防止に全力を挙げる必要がある。

 基地は千曲川と浅川という川に挟まれたところにあり、地元では浸水の恐れのある場所と認識されていた。長野市のハザードマップでは、一帯の浸水深は「5メートル以上」となっていた。

 それが8月の改定で「10~20メートル未満」となり、危険度はより高まった。この警告に敏感に反応していれば、より高いところを走る本線上に車両を退避させるなどの措置がとれたと、防災の専門家らは指摘する。

 決して無理な話ではない。実際にJR東は今回、台風が来る前に栃木・那須塩原にある東北新幹線の車両基地の列車を退避させ、被害を免れている。長野市は台風の予想進路から外れてはいたが、見通しの甘さ、判断の誤りを、同社自身の対応の違いが裏づけた形だ。

 今後、浸水に備えた社内ルールを見直すという。どんな気象条件の時に、いかなる策を講じるか。様々な想定をして、関係者の間で共有してほしい。

 他社の新幹線でも、浸水想定域内に立地されている車両基地が複数ある。今回の事故を機にJRを含む各鉄道会社は、運行のための重要施設が抱えている危険性を点検・確認し、その低減策を練ってもらいたい。

 北陸新幹線はあすから東京―金沢間の直通運転を再開する。発着本数が限られるのは当面避けられない。15年の開業以来、観光客の増加にわく石川県などから、地域経済への影響を心配する声が上がっている。

 新幹線に限らず社会インフラが機能不全に陥ると、人や物の流れが滞り、くらしに影響が及ぶ。昨年、台風21号が関西を襲ったときは、関西空港の電源設備が高波や高潮で動かなくなった。先月の台風15号では千葉県内で停電が大規模・長期間にわたり、多くの住民が疲弊した。

 政府は昨年来、3年間で7兆円を投じ、堤防のかさ上げや鉄道ののり面の補強などを進めている。だが施設を運営する側の意識が伴わないまま、土木工事だけしても意味がない。

 台風など一定の予測ができる災害に関しては、数日前から、誰が、何をすべきかタイムラインを決める。そのままにせず、災害ごとに定期的に見直す。日頃の備えに勝る防災策はないことを、いま一度確認しよう。

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