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 日本とロシアが北方領土で共同の経済活動を始めよう――。それは、安倍首相が地元の山口県にプーチン大統領を招いた会談で合意した目玉とされた。

 あの会談からまもなく3年。具体的に軌道に乗りそうな活動はまったく見えていない。両国の関係改善へ向けたプランであり、もっと真剣な実現の努力が必要ではないか。

 先日、日本人観光客らの一行が国後(くなしり)島と択捉(えとろふ)島を訪問した。経済活動の優先分野とされる観光ツアーの試行という位置づけだったが、結果的には本格実施の難しさを浮き彫りにした。

 最大の問題は、両国が自国の領土と主張する四島に日本人観光客が入るための法的枠組みが決まっていないことだ。

 今回は既存の「ビザなし交流」の仕組みを例外的に適用した。しかし政府関係者が同行する必要もあり、商業ベースの観光旅行にはそぐわない。現地で観光客が事件に巻き込まれたような場合に、どちらの法律を適用するかも大きな課題だ。

 共同経済活動をめぐっては、観光ツアーのほか、海産物養殖、温室野菜栽培、風力発電、ごみ減量対策を優先分野とすることで合意している。だが観光以外では、両国のごみ処理の専門家が相互視察をしただけにとどまっている。

 安倍氏は「日本人と仕事をして豊かになったという実感をロシアの人々が持つ意味は大きい」と主張する。成功体験の共有が領土問題解決につながるという考えだが、現状では机上の空論というしかない。

 ただ、経済活動実現の意味が失われたわけではない。

 安倍氏は昨年来、四島返還を当面断念し、歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)の2島に絞る方針に転じたが、その交渉は頓挫した。現実的に残されているのは、3年前の合意にもとづく交流拡大の地道な方策しかない。

 現行のビザなし交流に参加できる日本人は、旧島民とその家族、報道関係者、学術専門家らに限られている。より多くの日本人が訪問できる仕組みをつくることは、信頼醸成や相互理解を進める意味合いもある。

 懸念されるのは、最近ロシアから後ろ向きの動きがあることだ。プーチン氏は9月、四島へのビザなし訪問をロシアが認めているのに、日本はクリミア半島問題を理由に対ロ制裁を続けている、と不満をもらした。

 共同経済活動を領土問題に結びつけようとする日本側への警戒感もあるだろう。だが、プーチン氏自身が、両国関係の発展に資すると認めたことだ。双方の立場を害さない形で実施するという合意の実現に努める責務が、両国政府にある。

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