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 マラソン・競歩の札幌移転を機に、東京五輪の運営に不安が持たれている。なかでも気がかりは、改めてあらわになった大会組織委員会、都、国の足並みの乱れだ。開幕は待ってくれない。信頼関係の確立とともに、課題の洗い直しを急ぎ、着実に対策を進めてもらいたい。

 まず取り組むべきは、ラグビーW杯の成果と教訓を検証し、関係者で共有することだ。

 全国12会場で44日間にわたって催されたW杯は、170万人超を動員し、海外から40万人以上が来日した。これに対し五輪は、会場は首都圏に集中し、期間は17日間。そこに国内外から1千万近い人が観戦に訪れると見込まれている。運営の難しさ、厳しさは格段に違う。

 まずは人の輸送・移動だ。

 W杯は会場と日程が分散していたこともあって、大きな混乱はなかった。それでも場所によっては、スタジアム一帯で相当の混雑と人の滞留があった。東京五輪ではさらに酷暑という悪条件が加わる。

 会場近辺だけではない。夏に行われた五輪テストでは、高速道路の交通を規制した影響で、都内各地の一般道に激しい渋滞が発生した。大会を円滑に運営しつつ、日常生活への余波を最小限に抑える。五輪の成否を握るカギになりそうだ。

 W杯の序盤では観戦チケットをめぐる混乱も目についた。偽造品、あるいは正規の販売分ではないと判断された入場券が、1試合で200枚見つかった例もあった。転売は公式サイト経由に限り認められたが、精算の遅れなどの苦情もあった。

 五輪も同様の仕組みを採用する。6月施行の不正転売禁止法によって、違法なチケットを譲り受けると刑事罰の対象にもなる。トラブルを防ぐために、注意喚起の広報と海外経由の非公式転売サイトの巡回などに力を入れる必要がある。

 W杯運営での最大のトピックは、台風の影響で1次リーグ3試合が史上初の中止に追い込まれたことだった。明文のルールがあり、また決勝トーナメントに進出する顔ぶれがおおよそ見えていたこともあって、幸い大事には至らなかったが、選手にとっても観客にとっても、極めて残念な出来事だった。

 五輪が同様の事態に直面しないとも限らない。日程の組み替えなどで対応するか、中止を決断するか。その場合の手続きや周知をどうするか。安全第一の考えに立ちつつ、段取りを精査しておくことが求められる。

 あらゆることを考慮に入れ、想定の引き出しを幾重にも増やす。丁寧な準備とそれを支えるスムーズな意思疎通が、大会を成功に導くと肝に銘じたい。

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