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 日本の政治史には、「歴代最長政権」として、その名が残ることは間違いない。しかし、これだけの長期政権に見合う歴史的な成果は心もとなく、年を追うごとに弊害の方が際だってきたと言わざるを得ない。

 安倍首相の通算在任日数がきょう2887日となり、明治・大正期に3度首相を務めた桂太郎を抜いて最長となった。短命に終わった第1次政権の後、12年12月に発足した第2次政権は7年近くに及ぶ。

 自民、公明両党は、衆参の国政選挙で6連勝した。第1次安倍政権以降、6年間で6人の首相が交代。とりわけ、政治の変化への期待を背負って政権交代を果たした民主党政権の混迷を目の当たりにした世論が、政治の安定を求めたことが背景にあるだろう。

 確かに、アベノミクスの下で株高が進み、企業収益や雇用の改善につながった。しかし、賃金は伸び悩み、国民が広く恩恵を実感できる状況にはなっていない。また、安定した政治基盤を生かして、少子高齢化などの難題に、正面から切り込んできたとも言い難い。長期在任で育んだ外国首脳との個人的な関係も、どれほど具体的な成果につながったであろう。

 一方で、長期政権がもたらした弊害は明らかだ。平成の政治改革の結果、政党では党首に、政府では首相に、権限が集中したことが拍車をかけた。自民党内からは闊達(かったつ)な議論が失われ、政府内でも官僚による忖度(そんたく)がはびこるようになった。森友問題での財務省による公文書の改ざん・廃棄がその典型だ。

 森友・加計問題は、首相に近しい者が優遇されたのではないかという疑念を招き、政治や行政の公平・公正に対する信頼を深く傷つけた。最近の「桜を見る会」の招待者をめぐる問題も根っこは同じだ。一方で、異論を排除し、自らに反対する者を敵視する首相の姿勢は、社会の分断を助長する危険がある。

 さらに、これほどまでに日本国憲法をないがしろにした政権は、過去に例がなかろう。歴代内閣が維持してきた憲法解釈を一方的に変更して、集団的自衛権の一部行使に道を開いた。憲法に基づく野党の臨時国会召集要求にも無視を決め込んだ。

 首相の自民党総裁の任期は残り2年である。個人的な信条から、長期政権のレガシー(遺産)を、強引に憲法改正に求めるようなことがあれば、政治の混乱を招くだけだろう。

 限られた時間をどう生かすか。国民が今、政治に求めていること、将来を見据え、政治が今、手を打っておくべきことを見極め、優先順位を過たずに、課題に取り組む必要がある。

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