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 第2次安倍政権下で毎年のように拡充してきた企業への減税が、今回も柱になるという。

 12月中旬に決める来年度の税制改正に向けて、与党が本格的な議論に入った。大企業がためている現預金を使ってベンチャー企業に投資する場合や、高速移動通信方式5Gの関連施設を前倒しで整備する携帯会社などに、減税する考えだ。

 自民党の甘利明・税制調査会長は「未来を先取りし、公正で公平な税制を築く」と言うが、本当にそうなるだろうか。

 消費税は10月、税率が10%に上がった。所得税は2020年から給与所得控除などのしくみが変わり、収入の多い人はおおむね負担が増す。対照的に企業にはさらに減税する。納得できない国民は多いだろう。

 この7年、安倍政権は一貫して、設備投資や賃上げに取り組む企業を、法人税の減税で支援してきた。

 政権発足時の12年度と比べ、18年度の設備投資はおよそ4割増えた。一方で賃上げは力強さに欠け、日本企業が保有する現預金は50兆円以上も増えて、200兆円を大きく上回る。ベンチャー企業への投資減税は、このことへの批判をかわしたい政権の意向を反映したものだ。

 ただ、新たな分野の研究開発など、首相が期待する効果をどこまでうむか、見通しにくい。5G減税も、携帯大手への優遇にならないか。

 公正や公平を掲げるなら、減税の条件を厳しくし、実効性を高めねばならない。「アメ」だけでなく「ムチ」も必要だ。利益が増えたのに投資に消極的な大企業には、減税の優遇がなくなる制度がすでにある。この対象をどこまで広げて強化するのか、検討が求められる。

 個人の暮らしにかかわる所得税では、大きく改正する議論には踏み込まない方針だ。

 しかし昨年は結論を出せなかった、未婚のひとり親の所得税負担を軽くするための議論は、決着させるべきだ。自民党内には伝統的な家族観から、寡婦(寡夫)控除の対象に加えることには消極的な意見が根強い。同じひとり親家庭なのに婚姻歴で差をつける制度は、不合理というほかない。要件や所得制限では男女差があり、この見直しも欠かせない。

 退職金や企業年金、個人年金も、働き方の違いで減税のしくみが異なり、株式などの金融所得への課税方法には以前から、不公平感がつきまとう。

 多くの宿題が、積み残されたままだ。ゆがんだしくみの放置は許されない。およそ3週間後に迫った税制改正大綱で、どこまで結論を示せるか。与党としての責任が問われている。

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