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 街頭で警察と衝突する若者らだけではない。もの言わぬ多くの香港人も、中国政府への反感と不信を共有している。その現実が証明された。

 24日にあった区議会選挙で、政府に批判的な民主派が議席の8割超を占めた。1997年に香港が中国に返還されて以来、民主派が区議会議席の半数を超えたのは初めてだという。

 逃亡犯条例改正案に端を発したデモが本格化してから5カ月あまり。市民生活や経済への影響は長引いている。しかし、それでも有権者の多くは民主派の要求を支持したのである。

 選挙運動で民主派は「警察の暴力」に対する調査や、行政長官選挙の民主化など、五つの要求を掲げてきた。香港と中国の両政府は誠実に要求を考慮し、応えるべきである。

 林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は「中国政府のいいなりだ」と批判されており、世論調査の不支持率は約8割にのぼる。香港警察の度を越した実力行使には、一部の親中派候補者からも懸念の声がでていた。

 区議会は条例制定権などの権限を持たないが、「一人一票」の直接選挙による民意が示された意味は重い。過去最高の投票率71%(前回は47%)は、党派を問わず広がっている危機意識の表れだろう。

 香港では5年前にも、「雨傘運動」と呼ばれる若者らの街頭行動がおきた。当時も市民の支持がわき上がったが、これほどの広がりはなかった。

 あのときよりもいっそう深刻な対中警戒感を市民に植え付けたのは、香港政府の背後にいる中国政府自身である。北京からの露骨な威圧こそが香港人の不安をかき立てている。

 人民解放軍は今月、香港での出動には厳格な規定があるにもかかわらず、市街地に部隊を展開させた。道路清掃の「ボランティア活動」だと主張したが、地元は一線を越えた威嚇だと受け止めた。

 先月に中国共産党が開いた会議では、香港について「国家安全を守るための法と執行制度を確立し、完全な形に整えていく」と宣言した。台湾への対応も含め、ことごとく強権的に臨む姿勢が際立っている。

 民心を圧力で従わせることはできない。香港に対し中国政府がやるべきことは、民意を謙虚に読み、「一国二制度」の原則に立ち戻ることだ。香港の自由と自治を尊び、力の介入は厳として慎むべきである。

 日本を含む国際社会はさらに香港情勢に注視し、声をあげる必要がある。法の支配を軽んじる中国の影響力が各地に広がる今、香港人が続ける改革の主張は決してひとごとではない。

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