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 5年に1度の年金財政の検証を受けた年金制度の改革が山場を迎えている。焦点は、非正規雇用で働く人たちにどこまで厚生年金を広げられるかだ。

 厚生年金の適用拡大は本人の年金が充実するだけでなく、年金財政の改善にもつながる。保険料負担が増える中小企業などの抵抗で長年先送りされてきたが、今度こそ、しっかり前へ進めてほしい。

 今回の見直しで、政権が力を入れるのは、高齢になっても働く人を後押しする施策だ。

 65歳になっても年金を受け取らず75歳まで遅らせることができるようにして、その分、毎月の支給額を増やす。働いて一定以上の収入がある人の年金を減額・停止する制度も、働く意欲をそがない仕組みへ改める。

 元気な高齢者にできる限り働いてもらうことは大事だ。ただ、財政検証では、高齢化と人口減少で将来受け取れる年金の水準低下は避けられないという現実を突きつけられた。より喫緊の課題は、年金財政を強化し、年金水準の低下に歯止めをかける方策を考えることだ。

 かぎを握るのが厚生年金の適用拡大だ。財政検証のオプション試算では、中小企業などで非正規で働き国民年金に加入する人たちが厚生年金に移ると、基礎年金の水準が改善する効果があることが示された。

 厚生年金は元々、フルタイムで働く正社員を念頭につくられ、「週30時間以上」働くという適用要件があった。非正規雇用の広がりを受けて要件が見直され、現在は従業員501人以上の企業で週20時間以上働き月収8・8万円以上の人たちも対象だ。これに対し、厚生労働省の有識者懇談会は9月、企業規模の違いで取り扱いが異なることは不合理だと指摘し、さらなる適用拡大を促している。

 厚労省の試算では、企業規模の要件を撤廃すると新たに125万人が厚生年金に加入する。一方、要件を501人以上から50人超にしても、新たな適用対象は65万人にとどまる。

 負担が生じる中小企業への支援策などを考える必要はあろうが、規模要件は廃止が望ましい。段階的に実施する場合も、将来の廃止を決め、そこに至る道筋を明確に示すべきだ。

 非正規雇用は働く人たちの4割近くを占める。ひとり親で子育てのためフルタイムで働くことができない人や、就職氷河期世代で意に反して非正規雇用となった人たちも多い。

 安倍政権は、女性の活躍や就職氷河期世代の支援も看板政策に掲げる。適用拡大は、こうした人たちのセーフティーネットの強化でもある。看板に恥じない改革にしなければならない。

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