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 宮城県にある東北電力女川原発2号機について、原子力規制委員会が新規制基準に適合するとの審査書案をまとめた。東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型で、東日本大震災で被災した原発が、再稼働への大きな関門を越えたことになる。

 審査には6年かかった。東北電力は、地震の揺れの想定を約2倍に引き上げて耐震性を高め、あわや津波にのまれかけた経験を踏まえて標高29メートルの防潮堤を設ける。過酷事故に備える設備も導入する。

 それでも、「想定外」は起きると考えておかねばならない。

 2020年度の工事完了後を見込む再稼働の是非を議論する前に、なすべきこと、考えるべきことはなお山積している。何より心もとないのは、万が一の際の避難計画だ。

 女川原発が立つ牡鹿(おしか)半島は、リアス式海岸の地形で避難の経路は限られる。立地自治体の女川町、石巻市はともに住民の3割超が65歳以上、その5人に1人はひとり暮らしだ。自家用車やバスでの避難がスムーズに進むだろうか。地震や津波との複合災害なら、なおさらである。周辺5市町も含めた30キロ圏の避難対象は21万人。避難先の確保も容易ではない。

 地域経済が原発に頼らざるを得ない現実も抱える立地自治体は今後、再稼働に同意する可能性が高いと見られる。しかし住民の不安は根強い。石巻市民が今月、再稼働に同意せぬよう県知事と市長に求める仮処分を仙台地裁に申し立てたのも、その表れだ。

 否決されたとはいえ、11万人の署名に基づいて、再稼働の是非を問う県民投票条例案も県議会に諮られた。周辺自治体には「万が一の時に住民の命を守る責任がとれない」と、再稼働反対を明言する首長もいる。

 朝日新聞はかねて、「『地元』を広くとらえよ」と社説で訴えてきた。女川原発では、県を経由して周辺5市町の意見を東北電力に伝える仕組みがある。原発災害の影響が広く及ぶことは、福島の大事故で身に染みたはずだ。県も東北電力も、周辺を含めた地元の声に真摯(しんし)に耳を傾けねばならない。

 原発は国策民営だ。その稼働について村井嘉浩知事は「国が責任を持って判断すべきだ」との考えを示している。自治体や電力会社だけでなく政府も、再稼働への住民の疑問や不安にこたえることが求められる。

 新規制基準のもとで、すでに原発9基が稼働している。とはいえ女川原発は、これまで繰り返し大地震や津波に襲われ、将来的にもそのリスクが指摘される地域にあることを、忘れてはならない。

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