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 NHK執行部の次のトップが決まった。みずほフィナンシャルグループ元会長の前田晃伸(まえだてるのぶ)氏である。今の上田良一(うえだりょういち)会長から来月下旬に交代する。

 NHKの最高意思決定機関は経営委員会であり、こちらの新委員長も近く決まる。体制一新を機に、NHKの存在意義を改めて熟考してもらいたい。

 公共メディアとしての適正な役割と規模は何か。報道機関として権力との健全な緊張関係は保たれているか。そうした問いの念頭に貫くべきは、視聴者本位の目線である。

 上田氏が率いた3年間を振り返れば、籾井勝人(もみいかつと)前会長のように露骨に政府におもねる失言はなかった。だが、NHKのありように疑問符がつく出来ごとが相次いだのも事実である。

 最近では、テレビ番組を放送と同時にネットでも流す計画をめぐり曲折があった。実施基準の認可手前で総務省から「適正な規模」で運営するよう見直しを迫られた。

 NHKは急きょ計画を修正した。ネット配信に充てる費用を減らし、1日24時間をめざした配信時間も縮める。テレビの衛星放送も、4波のうち一つをやめることにした。

 そうした事業の整理をなぜ、最初から描けなかったのか。

 NHKの受信料収入は過去最高の7千億円超で、繰り越し剰余金も1100億円に上る。民放との健全な二元体制を危ぶむ指摘があるほか、受信料を担う視聴者の声も多様化している。

 今秋から来年にかけ受信料を値下げし、民放との連携を約束してきたとはいえ、自らの肥大化を厳しく律する姿勢が乏しいのではないか。

 最も大切なのは、放送法が定める番組づくりでの「自主自律」の原則だが、これも疑問を抱かせることがあった。

 かんぽ生命保険の不適切な販売をめぐる報道である。NHKはいち早く被害の実態を報じたものの、元総務次官を含む日本郵政グループ幹部からの申し入れを受けた経営委が上田会長に厳重注意をし、前後してNHKの続報が見送られていた。

 前田次期会長には、報道機関を率いる覚悟をもってほしい。政治や企業、各種団体などからの圧力に屈することなく、視聴者の公益に資する情報を伝えるのがNHKの使命である。

 前田氏はきのうの会見で「信頼される質の高い番組を作る」と強調した。高い技術と優秀な人材を多く抱えるNHKは、確かに優れたドキュメンタリーや災害報道などで定評がある。

 その貴重な資産を、国民の知る権利と民主主義の発展に生かす重責を、組織全体で再確認してもらいたい。

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