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 かつて旧ソ連の一部だった、ウクライナの紛争は今やあまり報じられていない。だが、大規模な戦闘こそ収まったものの、散発的な衝突は続いている。

 同国東部を支配している親ロシア派と、政府軍との争いで、2014年以降約1万3千人の命が失われている。

 この戦乱を終息させる国際的な努力が今週、久しぶりに動き始めた。まだ和平への道は険しいが、関係国による話し合いの復活を歓迎したい。

 ウクライナ、ロシアと、仲介役のドイツ、フランスの4首脳が集まり、2015年の「ミンスク合意」と呼ばれる停戦プロセスの再開で合意した。

 この4者会談が開かれたのは約3年ぶりだ。きっかけは今年のウクライナ大統領選で、戦争終結を公約にしたゼレンスキー氏が圧勝したことだった。

 ロシアにとってはもともと、この紛争による欧米からの制裁や、親ロ派を支える経済負担が重荷となってきた。米国政府が「ウクライナ疑惑」で動けないなか、マクロン仏大統領が仲介に動いたこともプーチン大統領の背中を押した。

 今回の会談では、兵力の引き離しや捕虜の交換などを約束した。まずはこうした信頼づくりの手立てを着実に実施して、合意された「完全かつ包括的な停戦」を実現せねばならない。

 「ミンスク合意」のもう一本の柱である、親ロ派支配地域での選挙や自治権付与については合意できなかった。選挙の前に、ロシアとの国境管理をウクライナ政府に戻すべきだとゼレンスキー氏が主張したが、プーチン氏が反対した。

 ロシア側が国境を越えて影響力をふるうような状況では選挙はできない、というゼレンスキー氏の主張はもっともだ。

 親ロ派による実効支配の追認につながる選挙の実施と自治権の付与は、ウクライナ国内で「ロシアへの降伏だ」という批判が強い。

 ロシアとの対話に踏み切ったゼレンスキー氏の支持率には、陰りが見える。さらなる妥協は政権の弱体化を招き、停戦プロセスが再び滞りかねない。そうなれば、ロシアも欧州との関係正常化に向けた機会を失うことになる。

 そもそもこの紛争は、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を一方的に併合し、東部への介入を始めたのが発端だった。ロシアはほかの周辺国でも分離独立勢力を支援してきた。

 本質的な問題は、近隣国の不安定化を自国の安心材料と考えるロシアの安全保障観だ。その姿勢を改めない限り、ロシアへの国際社会の警戒と反発は解けない現実を直視すべきである。

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