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 陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備先について、秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場を候補地とする計画の見直し論が、政府内で浮上している。

 地元の強い反発に押されたのだろう。かねて朝日新聞の社説は、限られた防衛予算の中で、巨額の投資に見合う効果があるのか、疑問を呈してきた。この際、導入の是非から、計画自体を見直すべきだ。

 弾道ミサイルの脅威に備えるため、政府は東西2カ所で日本全体をカバーすると言い、東日本は秋田市の新屋演習場、西日本は山口県萩市の陸自むつみ演習場を候補地とした。

 だが、周辺住民からは、レーダーの発する電波の影響や、有事に標的となるリスクを懸念する声があがった。とりわけ秋田で政府不信を決定づけたのが、新屋を「唯一の適地」とした防衛省の報告書に、ずさんな誤りがいくつも見つかったことだ。住民説明会での職員の居眠りも怒りに拍車をかけた。

 政府は現在、青森、秋田、山形3県の候補地を再調査中だ。菅官房長官や河野防衛相は「住宅地との距離」を考慮する考えを示したが、何を今さらの感がある。新屋は間近に住宅地が広がり、県庁や市役所も遠くない。米軍から激しい空襲を受けた記憶も残る。

 地域の実情や住民感情を考えることなく、「新屋ありき」で検討したとしか思えない。

 一方で「秋田を見直せば山口の見直しにつながりかねない」と、候補地の変更に否定的な意見も根強いようだ。菅氏も公式には「新屋を断念した事実はない」という。計画全体の頓挫を恐れて新屋に固執するなら、本末転倒と言うほかない。

 日本周辺の安保環境の厳しさを考えれば、ミサイル防衛のあり方を不断に検討していくことは重要だろう。ただ、自衛隊はすでに、イージス艦が発射する迎撃ミサイルと地対空誘導弾「PAC3」による2段構えの体制をとっている。

 そこに2基で5千億円を超す陸上イージスを加えることが、費用対効果の面から適正と言えるのか。政府は「24時間365日、日本全域を守り続けることができます」と喧伝(けんでん)するが、説得力のある根拠は示されていない。運用開始は早くても2025年度以降の見込みだ。

 安倍政権が前のめりなのは、トランプ米大統領が米国製兵器の大量購入を求めていることと無縁ではあるまい。しかし重要なのは、日本自身による主体的で、冷徹な判断である。

 厳しい財政事情のもと、この計画の妥当性と実効性が、厳しく問われねばならない。

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