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 ■成蹊大×朝日新聞

 人工知能(AI)やロボット技術の急速な発達により、社会が新たな段階Society5・0に突入しようとしている。様々な社会課題が解決すると期待される一方、不安も根強い。2020年春にSociety5・0研究所を開設し、AIと人類の共栄について研究を進めていく成蹊大学が、朝日新聞社と共催で「Society5・0を生きる」と題して教育会議を企画し、未来の可能性を議論した。【東京都千代田区の有楽町朝日ホールで、11月21日に開催】

 ■基調講演 情熱と個性のコラボ、開く新時代 DeNA(ディーエヌエー)代表取締役会長・南場智子さん

 DeNAの創業が1999年で、今年ちょうど20周年を迎えた。この間にインターネットが普及するなどして、多くのポジティブな変化が地球の隅々に行き渡った。そして今、IoT、ビッグデータ、AIに象徴される情報テクノロジーの急速な発達で、ネットの世界だけでなくリアルな世界にも恩恵が滲(にじ)み出てきている。

 DeNAもネット上に閉じた事業だけではなく、モビリティーサービスやヘルスケアサービスのほか、横浜DeNAベイスターズの運営、街づくりにも挑戦して事業を拡大してきた。

 我が社で成果を上げている事業チームをみると、実に多様で個性豊かな人材が集まっている。モチベーションの源泉も強みもバラバラ。このバラバラが強さの秘密だ。多様な個性が異なるものを持ち込むことで世の中に大きな喜びを届ける。一方でショックへの耐性も強くなる。

 Society5・0と呼ばれるこれからの時代を切り開くにはどんな人材が求められるのか、私なりに考えてみた。(1)自分なりの個性をチームに持ち込むこと、(2)様子の異なる人とコラボレーションする力を持つこと、そして特にリーダーにもとめられるのが(3)様子の異なる人たちを一つにまとめるための「パッション」を表現すること、だ。今の日本の教育でこの三つを強化する方向になっているかどうか、疑問だ。

 そこで初等教育が課題になるのだが、前述の三つの強さを育むには、プログラミング教育が一つの有効な方策になると思う。DeNAはCSRとして、佐賀県武雄市や横浜市などで無料アプリでのビジュアルプログラミングを教えている。小学1年生でも、筆箱をパンと鳴らす音を取り込んだホームランのアニメーションや、UFOを撃ち落とすゲームなど、実に個性豊かな作品を作る。小学校中学年ではグループで一つの作品を作ることでお互いに協力するダイナミズムと、もっと面白いものを作りたいというパッションとが生まれている。

 新しいものを応援するという点でいうと、DeNAでは「デライト・ベンチャーズ」というファンドを始めた。会社として公式に優秀な人材の背中を押し、独立起業を支援する。リストラの逆で、良い人から順番に起業のチケットを与える。その人たちと緩やかに連携することで、一社でやるよりも大きな喜びが提供できる。会社は出資に対するリターンを得られるだけでなく、大きなデライトの一部になることで、事業機会は格段に拡大すると考える。

 これからの企業は、新卒一括採用や終身雇用などは壊すべきだ。企業は個性や情熱に合わせた主体的な職業選びを歓迎すると同時に、社員を囲い込むのではなく、その個性や情熱を解放する経営に舵(かじ)を切っていく必要がある。

    *

 なんば・ともこ 1962年生まれ。86年、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。ハーバード大学にてMBAを取得後、マッキンゼーでパートナー(役員)に就任。99年にディー・エヌ・エーを設立。2017年から現職。

 ■パネルディスカッション

 安宅和人さん 慶応義塾大学環境情報学部教授 ヤフー株式会社CSO

 塩出晴海さん Nature株式会社代表取締役

 北川浩さん 成蹊大学学長

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 基調講演に続き、「Society5.0を生きる」をテーマにしたパネルディスカッションを行った。

 (進行は、一色清・朝日新聞社教育コーディネーター)

    ◇

 ――自己紹介を兼ねて、「Society5・0はどんな社会になるのか」についての考えを聞きたい。

 安宅 ヤフーのCSOとして戦略の責任者をしている。Society5・0の社会では、イノベーションであらゆる産業や機能がAI化する。例えばセンサーを織り込んでスマートフォンの機能を持ったジャケットや、AIで事故後の自動車の写真を分析し短時間で保険金を見積もるサービスが生まれている。一方で考えなければならないのが気候変動の加速だ。深く考えずにSociety5・0によるデジタル変革を進めるとヒートプラネットになる。そうならないようやることが重要なのだが、全く議論されていない。

 塩出 三井物産に勤務して電力の事業開発をしていたとき、インドネシアで見た炭鉱の、山が大きくえぐり取られた脇に人間の集落があった場面に違和感を持った。同じ頃に福島原発事故が起きた。電気があるのは当たり前ではないことを実感し、退職し会社を立ち上げた。目指すのは電力を個人間で売買するプラットフォームの構築。石炭火力や原子力に代わる電力供給体制になる可能性がある。Society5・0では、モノがつながることでリソースの効率利用が進展すると思う。

 北川 Society5・0では医療や介護、インフラ整備など、よりシリアスな領域に変革が起きる。成蹊大学では、新たに設置するSociety5・0研究所と昨年度開設したサステナビリティ教育研究センターと各学部とをつなぎAI時代の人材像など社会課題解決に向け議論していく。

 ――日本ではスタートアップ企業が成長しにくいところがあるように思う。阻害要因は何か。

 塩出 一つは大胆な政策の欠如だ。例えばドイツは、日本の3・11後に原発ゼロ政策を打ち出したことで多くのエネルギーベンチャー企業が生まれた。日本は2020年に発送電分離を始めるが、制度上の分離にとどまる。実施に新規参入者が戦えない状況だ。

 南場 日本でもスタートアップ企業は増えているが、人口単位やGDP比でみると圧倒的に少ない。起業意欲に関する調査結果をみても、日本は先進国の中でずっと最下位。大企業に就職することが一番という価値観があるし、それ以前にみんなと同じように振る舞うことがいいことだと小学校前から教育されている。常識を疑う教育をしないと起業家は生まれない。

 ――若い人は新卒一括採用や終身雇用に強い疑問を持っていないように思う。どうしたら挑戦する風土が生まれるだろうか?

 安宅 慶応義塾大学SFCは、一般入試もAO入試のようにやっていて、かなり面白い学生が集まっている。チャレンジ精神のある面白い人はいくらでもいるのに、そんな人を集めないから多くの学校は変わらない。成功はIQにそこまで依存しない。実際には運と出会いとチャーム(人を引きつける力)が圧倒的に重要。特にチャームを磨くことをきちんとやっておかないといけない。

 塩出 人間が他の動物と決定的に違うのは意思があるかないかだが、その大切さが教育の中で語られていない。自分の内側から湧いてくる意思を問い、個として戦う力を身につけさせる教育をすべきだ。

 北川 多様性。そのためにコラボすることは大切。成蹊大学では企業との「丸の内ビジネス研修」、地元吉祥寺や地方にある大学とのコラボなどによって多様な環境を提供している。

 ――Society5・0に向け私たちが取るべき態度は?

 南場 危険が迫ったときロボットは誰から優先的に救っていくべきなのかという議論がある。価値観によって答えがみんな違う。最終的にロボットに意思を込めるのは人間。どのような意思を込めるのかが問われる。私たちはより良い社会のために果敢に挑戦していかなければならない。

 北川 DeNAさんのようにAI人材に新入社員でも1千万円の報酬を出す企業が出てきて、新卒一律の「初任給カルテル」が壊れてきた。とがったことをやる人が動けるような多様性の高い環境を、大学や企業が作っていくべきだ。人と同じことをやればいいという画一集団的文化から脱却して、Society5・0をできるだけ明るい社会にしていきたい。

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 あたか・かずと 1968年生まれ。イエール大学脳神経科学Ph.D。データサイエンティスト協会理事。マッキンゼーを経て2008年からヤフー。16年から慶応義塾大学SFCにてデータドリブン講座を担当、18年から現職(兼務)。

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 しおで・はるうみ 1983年生まれ。北海道大学工学部、スウェーデン王立工科大学卒。三井物産に6年間勤めた後、ハーバード大学へ。在学中にIoT製品を開発するベンチャー企業Natureを立ち上げた。

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 きたがわ・ひろし 1960年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科博士課程を経て89年成蹊大学経済学部専任講師。同大学教授、キャリア支援センター所長、経済学部長を歴任。2016年から現職。専門は経済学。

 ■新しい社会を前に、尽きぬ問題 会議を終えて

 AIやロボットが課題を解決するSociety5.0はどんな社会になるのだろうか、というのが議論の中心テーマだった。

 南場さんは「本当の人間らしさとは何かが問われる時代になる」と言った。やりたくないことは可能な限りロボットやコンピューターにやらせるとなると、じゃあいったい自分は何をやりたいのだとか、幸せって何だろう、といったことが問われるはずだという。

 人間がAIに支配されるとかAIの戦争は悲惨な結末を迎えるとかの悲観的な言説もあるが、安宅さんは「AIには意思はないのです。人間には悪いやつがいっぱいいるという議論でしかありません」と、あくまで人間の問題だと話した。

 新しい社会の到来を阻むものへの批判も出た。塩出さんは慣性力という言葉を使って大企業や制度など古いものを守ろうとする日本社会が新陳代謝の邪魔になっていると指摘した。北川さんはリクルートスーツ撲滅キャンペーンをしようと言ったところ学生に反対されたという話をした。若者の中にも前例踏襲の慣性力があるということだ。

 新しい社会を前にして古い考え方を打破しないといけないということが強調された。同時に新しい社会にある問題も指摘された。ふだん聞くことのできないとても刺激的な議論が展開されたと思う。

 (一色清)

 ◆キーワード

 <Society5.0> 狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)に続く新たな社会を意味する。人工知能(AI)やロボットが高度な革新的技術により経済発展と社会的課題の解決を両立する「人間中心の社会」とされる。

 <成蹊大学> 教育者・中村春二が1912年に創立した成蹊実務学校を源流とする。49年、それまでの7年制高等学校を基に成蹊大学を開設。小、中・高、大学、大学院が東京・吉祥寺の一つのキャンパスにある。2020年4月、経済学部を新しい経済学部(経済数理学科・現代経済学科)、経営学部(総合経営学科)に改組する。

 ■朝日教育会議

 14の大学・法人と朝日新聞社が協力し、様々な社会的課題について考える連続フォーラムです。「教育の力で未来を切りひらく」をテーマに、来場者や読者と課題を共有し、解決策を模索します。申し込みは特設サイト(http://manabu.asahi.com/aef2019/別ウインドウで開きます)から。各会議の日時や会場、講演者などについても特設サイトをご覧下さい。

 共催の大学・法人は次の通りです。

 神田外語大学、京都女子大学、共立女子大学、慶応義塾大学、公立大学法人大阪、成蹊大学、拓殖大学、千葉工業大学、東京工芸大学、東北医科薬科大学、東洋英和女学院大学、法政大学、明治大学、早稲田大学(50音順)

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