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 高い関税をかけあい、1年半にわたり世界経済を揺さぶっている米国と中国が、貿易交渉で「第1段階の合意」に達した。

 これにより、中国製スマートフォンなどへの新たな関税の引き上げは見送られた。ほぼすべての輸入品が高関税となれば、双方の経済へも深刻な打撃となるところだった。最悪の事態は回避されたと言える。

 合意文書に署名した後、米国は9月に始めた高関税の税率を半減させるという。報復の応酬のなかで関税を下げるのは初めてで、歩み寄りへ前進したようにも見える。

 だが、両国間の約束はもろく、崩れやすい。

 昨年12月にはブエノスアイレスで、今年6月には大阪で、米中の首脳は顔を合わせ、対話による解決と関税引き上げの延期を約束した。しかし、思うように交渉が進まないと米国は改めて高関税へ突き進み、中国も対抗措置で応じた。

 今回も、両国の説明にはずれがあり、安心はできない。

 米国は、署名の時期は「来年1月第1週にも」とし、紛争解決の枠組みをつくると説明する。中国が、米国からの輸入を今後2年間で少なくとも計2千億ドル(22兆円)増やすと約束したことにも触れた。

 中国は、署名時期や紛争解決に言及していない。米国からの輸入拡大の量や内容も「将来公開される」と言うのみだ。

 合意文書には、知的財産などの項目もあるが、国有企業への補助金といった中国経済の根幹にかかわる課題には踏み込んでいない。対立解消の鍵を握る重要課題は、棚上げされた。

 米農産物の輸出も盛り込んだ「合意」は、来年11月に米大統領選を控えるトランプ氏にとって、支持基盤の農家へのアピール材料になる。交渉がまとまったという成果を強調しながら、難しい問題の議論は先送りする構図は、先の日米貿易交渉とも重なる。

 中国側も経済成長の失速に直面しており、歩み寄る必要があったのだろう。

 打算の産物にも見えるが、両国は今回の「合意」を、一時的な休戦に終わらせてはならない。不毛な貿易紛争は、収束に向かわせるべきだ。

 産業補助金などの中国の構造改革は、日欧も求めてきた長年の課題だ。しかし力ずくでは何も解決しないことは、この1年半が証明した。

 米中は、まずは今回の合意事項を確実に実行する。そして対話で対立を解決する枠組みを構築し、大国関係を安定させなければならない。

 報復激化への逆戻りは、もう許されない。

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