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 「郵便局」への信頼につけこみ、目先の利益に走るような行為がなぜ広がったのか。根本からの立て直しが急務だ。

 かんぽ生命の不正販売について、社外弁護士らでつくる特別調査委員会が昨日、報告書を公表した。過去5年間で顧客に不利益を与えた疑いのある18万3千件のうち、今月13日までに14万8千件の契約を確認したところ、法令や社内規定の違反を疑われる契約が1万2836件に及んだという。

 不正が横行していた実態に、改めて驚きを禁じ得ない。

 報告書は、不正の直接的な原因として、規範順守の意識に欠けた職員への教育や指導が不十分だったうえ、郵便局の目標達成のためにそうした職員を厚遇し、不正販売が黙認される風潮ができていたと指摘した。

 さらに、目標必達を掲げ、恫喝(どうかつ)や叱責(しっせき)を伴うような営業推進や、新規契約の獲得に偏った手当の体系が不正販売を助長した。一方で、不正防止の体制が不十分で、実態の把握もできていなかったという。

 不正に関与した職員の責任も重いが、こうした状況を生み出し、放置していた管理職や経営陣の責任は、一層厳しく問われる必要がある。

 とりわけ、企業統治の不全についての指摘は深刻だ。かんぽ生命では、問題の端緒が報告されても、根本原因を追究せずに矮小(わいしょう)化する組織風土があった。販売を担う日本郵便も、複雑な組織構造の中で実態把握ができていないうえ、法令や社会規範を順守するための体制がとられていなかったという。

 持ち株会社の日本郵政は、果たすべき役割やグループの企業統治のあり方について、役員の間で合意が形成されていなかったと指摘された。

 今回の報告は、経営幹部の責任は「調査対象ではない」として切り込んでいない。会見で経営責任を問われた日本郵政の長門正貢社長は、「しかるべきタイミングで改めて発表する」と答えるにとどめた。

 だが、これだけの事態にもかかわらず、今年6月末まで重大性を認識していなかったとの釈明を繰り返した現経営陣では、経営の立て直しと信頼回復の任に堪えないのは明らかだ。かんぽ問題を報道してきたNHKの取材手法について、「まるで暴力団」といった見方をするような人物が中枢にいるようでは、再建はおぼつかない。

 経営体制の刷新と企業統治の改善がすべての前提になる。

 金融庁は近く処分を公表する見通しだが、厳正な対応が必要だ。また、今後の民営化の進め方への影響も見極め、議論を深めなければならない。

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