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 「経済再生と財政健全化を両立する予算」という、安倍首相の自己評価が空しく響く。

 政府の2020年度の予算案の総額は、当初段階で2年続けて100兆円を超え、大型の経済対策をとったリーマン・ショック時の決算を上回った。

 歳出増は、政権がこだわる政策に手厚く配分した結果だ。

 増税対策を主眼に置く2年限りの臨時・特別の措置では、河川の堤防強化など災害に対応する1兆円超の公共事業や、二つのキャッシュレス決済でのポイント還元制度に計5千億円あまりを投じる。

 首相自らが決めた幼児教育や保育、高等教育の無償化などには消費税の増収分から1兆7千億円を使い、防衛費も決定済みの計画に基づいて増やした。

 消費税率は10%になり、税収の総額も63兆円超と過去最大になった。それでも歳出とのバランスは崩れたままで、40兆円近くも足りない。

 第2次安倍政権は6年前の予算編成のときから「財政健全化との両立」を掲げ、発足以来、当初予算での新規国債の発行額を前年度より減らしてきた。

 だが、まやかしがある。

 今回入りきらない様々な政策は、1週間前の今年度の補正予算案に盛り込んだ。そして、半分以上を借金の返済に充てるルールが法律で決められている18年度の剰余金を全額、この補正と今回の当初予算案で使い切る。ルールの変更は、東日本大震災以来の異例の対応だ。

 しかも、国債発行額が前年度より少ないのは、あくまでも当初段階での話だ。年度途中で組む補正分も含めると、国債の発行額は直近の2年間、前年度を上回っている。

 当初での予算規模や国債発行を抑えるため、補正を毎年のように組む悪弊から、抜けきれない。予算の実際の姿は、健全化を誇れる状態からはほど遠い。

 歳出面は硬直化が著しい。

 全体の7割超を、高齢人口の伸びで増える社会保障費と、借金の元利払いに充てる国債費、地方自治体に渡す交付税で占める。一気に絞り込むことは極めて難しい。その上に政権が重視する政策を積み重ねれば、どうしても歳出はふくらみ続ける。

 歳入面は、低金利を前提に借金に寄りかかる。

 新たな分野に予算を振り向ける余裕は乏しく、公的サービスを安定的に維持することすら、危うくなりかねない。

 安倍政権は「消費税を10%に引き上げ、財政健全化に大きな道筋をつけた」という。ならば数字を取り繕うようなふるまいはやめるべきだ。首相は、財政のありのままの姿と進む道を、説明する責任がある。

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