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 国内で今年生まれる日本人の赤ちゃんが86万4千人になるとの推計を、厚生労働省が公表した。統計のある1899年以降で最も少ない。

 出生数が減ることは予想されていたが、2年前の長期推計では、21年に86万9千人と見込んでいた。今回は2年前倒しで、これを下回ることになる。深刻な事態だ。

 これまでの政策に何が欠けていたのか。総点検して見直すとともに、社会のありようを根本から改めなければならない。

 出生数が減った理由について厚労省は、出産をする人が多い25~39歳の女性の人数が減ったこと、元号が変わるのに合わせて5月に結婚が集中し、昨年から今年前半にかけての結婚数が減った影響などを挙げる。

 たしかにそれもあるだろう。だが、今回の減り方は、そうしたことだけでは説明できない。景気の影響もあるだろうが、結婚・出産をしづらい構造的な要因にも目を向けるべきだ。

 子どもを産むか産まないか、いつ出産をするかは、個人の自由な選択である。しかし子どもを持つことが不安や負担を招きかねない社会の状況は、変えていく必要がある。

 安倍首相は少子化を「国難」と呼び、子育て世代への支援拡充を最優先の課題に掲げる。だが、肝いりの全世代型社会保障検討会議では、子育て支援は全く議論されていない。すでに保育所の整備や幼保無償化を進めていると言うが、それでは不十分だということを、今回の数字が如実に示している。

 待機児童数は4月時点でなお1万6千人を超え、潜在的な保育ニーズはさらに多い。

 若い世代は手取り収入が増えず、男女の賃金格差もなお残る。長時間労働は改善されず、男性の育休取得率は6%と相変わらずの低水準だ。妊娠・出産をきっかけに職場で嫌がらせを受けるマタニティーハラスメントも後を絶たない。

 子育てに悩む家庭の孤立は深刻だ。児童虐待も増え続けている。

 ひとりで子どもを育てる親の税負担を軽減する措置に、未婚のひとり親を加える見直しがようやく進んだが、古い家族観や世帯モデルを前提にした制度はまだ多い。

 子どものいる家庭への支援にとどまらず、結婚をためらう若い世代への支援、子育てと仕事を両立できる職場の環境づくり、企業や働く人たちの意識改革など、総合的で重層的な対応が求められる。

 子どものための政策にお金を使うことは、未来への投資である。より踏み込んだ取り組みを考えるべき時だ。

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