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 福島第一原発の処理ずみ汚染水を、どう処分したらいいか。有識者でつくる小委員会の検討が大づめを迎えている。

 3年間の議論を踏まえ、今週、海洋放出と大気放出に絞る提言案が示された。委員から「社会的な影響がきわめて大きいと明記するべきだ」などの注文が出て、事務局を務める経済産業省が案をつくり直す。

 この問題は科学的・技術的な側面だけでなく、社会的な影響など、さまざまな角度から慎重に検討するべきものだ。拙速なとりまとめは禁物で、最後まで議論を尽くす必要がある。

 いまも1~3号機の原子炉では、事故で溶け落ちた核燃料を冷やす注水や地下水の流入により、放射能で汚染された水が毎日150トンほど生じている。浄化装置で処理しているが、放射性物質トリチウム(三重水素)を取り除くことはできない。

 処理ずみの水は敷地内にタンクを増設しながら保管しているが、東京電力は「2022年夏ごろにタンクが満杯になる」としている。これまで小委員会は「薄めて海に流す」「蒸発させて大気に放出する」など5案を検討してきた。

 トリチウムを含む水は国内外の原発で海に流しているほか、米国のスリーマイル原発事故の際は、水蒸気にして大気中に放出した。提言案が海洋または大気への放出に絞り込んだのは、こうした実例があることを重視した結果だという。

 昨年夏の地元などでの公聴会を受けて追加で検討した敷地内での長期保管案については、廃炉作業の用地確保に支障が出るなどとして採用を見送る。

 小委員会では、こうした方向性に異論は出なかった。

 だが、環境中に放出する案に地元の反発は強い。

 特に漁業者は、福島の海産物がさらに敬遠されてしまうとして、海洋放出に反対している。水揚げが震災前の15%ほどにとどまっている現状を考えれば、当然の不安である。

 だからこそ小委員会も、風評被害などについて時間をかけて検討してきた。そうした議論を提言にしっかり反映しないと、「最初から放出ありきだったのでは」と地元で不信感が広がっても不思議はない。

 具体的な処分方法や開始時期などについて、提言案は「政府の責任で決めるべきだ」としている。政府がどういう判断をくだすにせよ、社会的な影響は最小限に抑えなければならない。

 そのために手立てを尽くすのは、政府の責務である。

 情報を開示しながら地元との対話を重ね、住民の声に誠実に耳を傾ける。そんな姿勢なくして理解は得られまい。