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 日本郵政の長門正貢(まさつぐ)社長らグループの3社長が辞任を表明した。高齢者らの郵便局への信頼を食い物にした不正の実態と、グループの統治が機能不全に陥っていた状況に照らせば、当然の判断だ。

 保険商品の不正販売で、かんぽ生命と日本郵便に金融庁がおととい、一部業務の停止を命令した。持ち株会社の日本郵政にも業務の改善を命じた。

 不正の全容はなお明らかではなく、社外弁護士らによる特別調査委員会も経営責任は解明していない。教訓を引き出すためにも、辞任した社長らは今後も調査に協力する必要がある。

 元総務次官で日本郵政の実力者だった鈴木康雄上級副社長も辞任が決まった。現職の総務次官が、郵政側に処分についての情報を漏らした際の相手方とされる。長門社長によると、外部弁護士らによる調査を検討したが、鈴木副社長が辞職という道を選んだため、これ以上調査を行わないという。

 社内の聞き取りに「そんなにひどいことはしていない」と話したといい、長門氏も鈴木氏が「ものすごい秘密を得ていた」との感触はないと強調した。総務省側の「検討過程の情報が細かく伝わっていた」という説明とは食い違う。次官と副社長の辞任で幕を引くのでは、官民癒着の実態は不明のままだ。詳しく調べて説明すべきだ。

 鈴木氏は、かんぽ不正を報道したNHKへの抗議を主導し、今年10月にはNHKの取材手法を「まるで暴力団」となじった人物でもある。「(鈴木氏と)意見は全く一致」と国会で述べていた長門氏は、辞任表明の会見で再三問われ、暴力団という表現について「不適切だと感じている」と述べたが、遅きに失した。統治の不全がここにも露呈している。

 2007年に株式会社化された日本郵政グループは民営化の途上にある。国の後ろ盾がある半面、業務は制約され、巨大組織のかじ取りは難しい。政権交代の影響もあって民営化方針は曲折し、トップ人事も政治に翻弄(ほんろう)されてきた。

 1月に日本郵政の新社長に就任する増田寛也氏は、12年余で6人目の社長になる。かんぽ生命と日本郵便の社長には、旧郵政官僚が内部昇格する。「役所体質」を改め、政治に振り回されないためにも、民間の視点を採り入れることを怠ってはならない。

 傷ついた信頼を回復するのは容易ではない。まずは企業統治を回復し、法令や社会規範を順守する、「顧客第一」の風通しの良い組織にうまれかわる。民営化のゴールに向かうためにも、それが第一歩だ。

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