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 米国とイランの対立が危険な領域に入りつつある。どのような形であれ、戦争に陥ってはならない。両国に最大限の自制を求める。

 この危機を直接引きおこしたのは、またも米国の唐突な行動である。イラン国民に広く知られる革命防衛隊の有力司令官を、空爆により殺害した。

 イランの最高指導者ハメネイ師は「厳しい報復」を予告しており、情勢は予断を許さない。

 国連事務総長は「新たな湾岸戦争に対応する余裕は今の世界にはない」と警告した。国連安保理はただちに会合を開き、善後策を話し合うべきだ。

 トランプ大統領は1年半前、イラン核合意から一方的に離脱し、経済制裁を再開した。そこから悪化した緊張関係が、今回の行動によって中東全体の緊迫へと一気に高まった。

 殺害された司令官は、米国の外交官や軍人への攻撃を企てていたと米政府は主張し、「戦争を防ぐためだ」と釈明する。だが、証拠も示さず一方的に攻撃する行為そのものが戦争行為とみられるのは当然だ。

 空爆の現場はイランの隣国イラクの首都で、イラク首相は「主権の侵害だ」と反発している。米軍は、脅威に対応するため3500人を中東に増派するというが、反米感情をあおっているのは米国自身である。

 秋に大統領選を控えるトランプ氏は、自らの弾劾(だんがい)から国民の関心をそらす狙いではないか、との見方もある。真相がどうあれ、この人物が米軍の最高司令官を務めている危うさを改めて痛感せざるをえない。

 今後、イランの動きが憂慮される。国内で強硬派が穏健派を抑えるようになれば、欧州などとの対話も壊れかねない。米側の挑発にのらず、核合意の枠組みを守ることが国益につながる現実を見失ってはならない。

 米国とイランの衝突のおそれは場所も形も複雑にありえる。イランは、イラク、レバノン、イエメンなどの武装組織を支えており、各地の米軍施設などへの攻撃で関与が疑われてきた。ホルムズ海峡などでも警戒レベルが高まるのは必至だ。

 その中東近海に自衛隊を派遣することを、安倍政権は先月に国会論議もしないまま決めた。米主導の「有志連合」には加わらないとはいうものの、反米勢力からは米軍と一体と見なされても不思議ではない。

 外交の常識では予測できないトランプ氏のふるまいに、ただ追随するリスクは明らかだ。安倍首相は中東情勢の緊迫をめぐる見解を示したうえで、何のために自衛隊を派遣し、どんな危険を伴うのかを、国民に正面から説明する義務がある。

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