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 中東情勢が大きく変化しているのに、既定路線に従って自衛隊派遣に突き進むことが、緊張緩和に資するのか。政府はいったん立ち止まり、派遣の是非から検討し直すべきだ。

 米軍によるイランの革命防衛隊の司令官殺害と、それに報復するイランのミサイル攻撃。イラクを舞台にした両国の武力の応酬は、トランプ米大統領が、さらなる攻撃はしない考えを声明で示し、最悪の事態は当面、回避された。

 しかし、トランプ氏は追加の経済制裁を科す方針も示しており、両国の対立がさらに深まる恐れはぬぐえない。イラクやシリアなどで、親イランの武装組織が米軍関連施設などを攻撃する可能性もある。衝突の火種が消えたわけではない。

 昨年末、国会でのまともな議論もないまま、安倍政権が中東海域への自衛隊派遣を閣議決定した時とは、前提となる現地情勢が明らかに変わっていると言わざるをえない。

 にもかかわらず、政府は新たなリスクをどう評価し、備えるのかの説明もないまま、派遣方針に変わりはないと繰り返している。河野防衛相はきのう、米国とイランの軍事衝突について「そのようなことは起きないだろう」と語った。

 ホルムズ海峡やペルシャ湾を活動範囲からはずしていることで、危険度は低いと判断しているのか。菅官房長官も6日のテレビの報道番組で、イランが自衛隊の活動に「理解は示している」とし、「(心配は)していない」と言い切ったが、認識が甘くはないか。

 日本は米国主導の「有志連合」には参加しないが、米国の同盟国である。米国への高まる敵意が日本に向かわない保証はない。トランプ氏は声明の中で、北大西洋条約機構(NATO)に対し「中東により関与するよう求める」とも述べた。安全保障関連法が施行された今、現地に日本の護衛艦がいれば、何らかの協力や支援を求められる事態もありうる。

 この地域に原油の供給の大半を依存する日本が今なすべきことは自衛隊派遣ではあるまい。イランと友好関係にある立場を生かし、関係国の意思疎通をはかる外交努力の徹底こそ、地域の安定に役立つはずだ。

 安倍首相はきのう、記者団に「(米国の)自制的な対応を評価する」としたうえで、今後も「外交努力を尽くす」と語った。今週末からのサウジアラビアなど中東3カ国歴訪を予定通り実施するのであれば、事態を悪化させぬよう、米国、イラン双方に一層の努力を求める立場を明確にし、国際社会に発信する場とすべきだろう。

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