[PR]

 昨年の出生数は90万人を割り込み、想定を上回る速さで少子化が進む。重層的な対策が課題になるなか、出産後1年未満の母子を対象に、心身のケアや育児支援をすることを市町村の努力義務と定める改正母子保健法が、先の臨時国会で成立した。

 こうした産後ケアにかかる費用を国が補助する事業は、すでに4年前に始まっている。だが手を挙げた自治体は、昨年度で3分の1強にとどまる。

 法律の裏づけができたことによって、首長や担当者の認識が深まり、地域間の格差が解消されるよう期待したい。

 出産後に母親が経験する心や体の不調は、しばしば深刻なものがある。親族や周囲の援助を得られず、孤立や不安に直面して苦しむ人も少なくない。

 厚生労働省研究班の調査によると、15~16年の2年間で、妊娠から産後1年までに亡くなった母親357人のうち、自殺が102人で最も多かった。初産婦の産後に限れば25%に「うつ」の症状がみられるとのデータもある。また、虐待で死亡した子のうち最も多いのは0歳児で、加害者は母親というケースも数多く報告されている。

 産後ケアでは、保健師や助産師が悩みに向きあい、授乳の仕方などの技術的な助言にとどまらず、心身の回復を手助けし、場合によっては専門的な手当てをする。泊まりがけで対応するタイプから日帰り型、外出の負担を考慮して保健師らが自宅を訪ねる方式まで、個々の事情に応じたサービスを提供できるようにしたい。事業を展開している市町村の中には、旅館・ホテルの空き部屋を利用したり、地域の病院や助産院と提携したりしているところもある。

 大切なのは自ら悩みを訴えられない人へのアプローチだ。産後健診の制度などを通じて状態を把握することが欠かせない。初産婦のみならず、幼い兄姉を抱える人のフォローも求められるし、国会審議では、子育ての当事者として父親も支援対象にすべきだとの指摘が出た。

 ここでもカギを握るのはカネとヒトだ。知識や経験のあるスタッフを確保する必要があり、関係者からは「赤字覚悟」との声も聞こえてくる。厚労省は普及の妨げとなっている原因を探り、対策を講じてもらいたい。

 3年前には、妊娠期からの切れ目のない支援をうたい、「子育て世代包括支援センター」の設置が市町村の努力義務となった。しかしこちらも、実現したのは全国の半数強にとどまる。法律を制定しても現場がついてこなければ意味がない。

 どこで暮らしても安心して子育てができる環境を着実に整える。それが政治の務めだ。

こんなニュースも