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 この1年半、互いに高い関税をかけあってきた米国と中国がようやく、「第1段階の合意」の署名にたどりついた。

 両国首脳は2度顔を合わせて歩み寄ると約束したが、実際は追加の制裁と報復を繰り返してきた。合意を受けて米国は2月半ばに、一部の関税率を半分に引き下げる緩和策に初めて踏み込む。

 世界経済を揺さぶり、エスカレートする一方だった対立は、一時休戦を迎えたと言える。

 しかし、英文で約90ページにわたる7項目の合意内容には、課題も少なくない。

 柱の一つの「貿易の拡大」では、米国製の工業製品や農産物の輸入を、中国が2年間で2千億ドル(約22兆円)増やすことを「保証する」と記した。関税をかけあう前の2017年の実績と比べて、中国の輸入額を平均で1・5倍にする。現実的な規模とは言えず、他の国との貿易もゆがめかねない。政府の統制が強まれば、自由貿易の原則に反する。

 中国市場に参入する外国企業に、技術移転を強要することは禁止する。合意に先立ち、中国は今月、行政機関に強要を禁じる法律を施行しており、その運用の実効性が問われる。

 相手国に不誠実な行動があれば、合意から脱退できるとの取り決めも入った。米国は中国からの輸入品の約3分の2にかけた高関税は残し、「交渉カード」として温存する。

 この時期に署名に至ったのは、両国とも先延ばしできない政治的な事情があるからだ。

 11月の選挙で再選を狙うトランプ米大統領は、支持者向けのアピールが欠かせない。中国は昨年の経済成長率が前年を大きく下回り、国内景気を底上げする必要があった。

 一方、最大の課題である中国の産業補助金の問題は先送りされた。米国は第2段階の交渉での焦点と位置づけるが、中国独自の「社会主義市場経済」のあり方に直結するだけに、手を着けるのは容易ではない。

 米国は、自身も参加して補助金の規制強化の議論が進むWTO(世界貿易機関)の場で、着地点を探るべきではないか。

 中国の構造改革が必要との問題意識は、日欧も共有する。規制強化の方向で日米欧は合意しており、加盟国に同調を呼びかけていく。中国も「国際的な貿易ルールづくりに積極的に参与する」との立場で、拒否はできないだろう。

 議論を進め、米国はすべての高関税を取り下げる。それが進むべき道だ。対立再燃の火種を抱えたままでは、構造問題の解決にも、世界経済の懸念の解消にも、たどり着けない。

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