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 安倍首相の言葉からは、財政健全化を達成しようという本気度が伝わってこない。目標が形骸化しているのではないか。

 政府は、その指標となる基礎的財政収支(PB)の黒字化を2025年度に実現するとしている。

 第2次政権になってから7回の施政方針演説で欠かさず「財政再建」に触れたように、きのうの演説でも首相は「引き続き、25年度のPB黒字化を目指す」と宣言した。

 ところが、政府が先週公表した29年度までの新たな試算でも、期間中の黒字化は見えてこない。実質の経済成長率が第2次政権下での平均に近い1%程度を前提とした場合、25年度は国と地方を合わせて8・2兆円の赤字だ。

 実質で2%程度、名目で3%程度を上回る高めの成長率でも、達成は27年度と見込む。

 黒字化は、政策経費を借金に頼らずにその年度の税収などでまかなえることを意味し、政策の持続可能性を高められる。近い将来、高齢化で医療などの社会保障費が急増することや、高度成長期に建設したインフラの更新費が伸びることも見越して、設定された。

 しかし、目標は先送りの連続だ。いまの政権も発足時は20年度をめざしていたが、2年前に25年度へと先送りした。

 これに先立ち、政府の調査会が財政健全化を総括し、遅れている理由に「税収の伸びが想定より緩やか」「消費税率引き上げの延期」「補正予算の編成」の三つを挙げた。そのうえで、「経済変動の中にあっても、目標の実現を確実にする仕組みを構築すべきだ」と指摘した。

 首相自身が「負担を次の世代へ先送りすることのないよう」に、財政健全化を進めると公言してきた。ならば、先の総括を実行へと移すべきだ。

 「経済再生なくして財政健全化なし」という政権の方針は、どこまで結果を残してきたのか。経済を上向かせる努力は欠かせないが、経済再生を名目に組んだ補正予算が、不要不急の歳出を増やしていないか。高い成長を前提に、税収を大きく見積もっていないか。不断に検証する必要がある。

 実績に近い成長率をもとに、経済や財政を見通す。新たに取り組む政策があるのなら、優先順位が低い政策は絞りこむ。目標を確実に実現する具体策を示すことこそ、首相の責任だ。

 この国会では、今年度も編成された補正予算案を、いち早く成立させる方針という。「経済対策」としてあれこれ盛り込まれており、精査が必要だ。与野党は成立ありきではなく、審議を尽くさねばならない。

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