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 今年の春闘が本格化する。足元の景気は不透明さが増しているが、過去数年の賃上げの流れを断ち切ることなく、着実に積み重ねていく必要がある。

 労働組合の中央組織である連合は先月の中央委員会で2020年春闘に臨む方針を決めた。

 (1)月例賃金のベースアップ2%程度の「底上げ」(2)企業規模や雇用形態を問わず一定の賃金水準を目指す「格差是正」(3)企業内で最低賃金協定を結び水準を引き上げる「底支え」――といった要求を掲げている。

 対する経団連は今週発表した報告書で、「賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持」に向け、各社の実情に応じて前向きに検討するとの基本姿勢を表明。賃上げへの「社会的期待を考慮」とする一方で、世界経済の減速を背景に「企業収益が下押しされる懸念がある」と指摘した。昨年の会長名の序文にあった「賃金引き上げのモメンタムの維持・強化」が、今年は「モメンタムの継続」になるなど、慎重姿勢もにじむ。

 確かに、米中貿易摩擦の長期化や、消費税率引き上げ、相次ぐ自然災害などで昨年後半来、景気は明らかに弱含んでいる。現時点では先行きどの程度回復するかも、はっきりしない。

 とはいえ、平均的にみれば企業の売上高や利益は高い水準にある。ここ数年の好業績で手元の現預金も手厚くなり、財務内容はおおむね健全だ。設備投資も底堅く推移している。

 過去数年、賃上げ傾向が続いたが、物価も上昇基調だ。実質賃金は伸び悩み、労働生産性の上昇に追いついていないとの分析もある。景気回復の成果が、働き手に十分に還元されたとはいえない。

 着実な賃上げは消費を支え、内需が安定すれば景気後退への歯止めになる。企業にとっても人への投資は今後の成長に欠かせないはずだ。

 経済界首脳は年始の記者会見で、五輪後の景気については政府の経済対策もあり「反動減の心配はない」と口をそろえた。一方で、賃上げを渋るようなことがあれば、経済界の言動への信頼は損なわれるだろう。

 経団連の今回の報告書は、新卒一括採用や長期・終身雇用、年功賃金などを特徴とする「日本型雇用システム」が転換期を迎えていることを強調した。経済環境や技術の変化が、雇用のあり方にも影響するのは否めない。個別の企業はこれまでも試行錯誤を続けている。

 ただ、そうした「転換」を名目に、働き手への分配や処遇を軽んじることは許されない。組合側が掲げる「底上げ」や「格差是正」と誠実に向き合うことが、企業側に求められている。

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