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 どの国であれ、少数派の命と安全を守るのは政府の義務である。国際社会の一員として、人権を守る施策をアウンサンスーチー氏に求める。

 ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャについて、国際司法裁判所が「ジェノサイド」の危機にあると認めた。政府に対し、迫害を防ぐあらゆる措置をとるよう命じた。

 ジェノサイドは、特定の民族や宗教に属する集団を抹殺する行為を指す。

 この国では2017年以降、治安部隊による作戦で多数のロヒンギャが殺され、70万を超す難民が隣国に逃れた。これがジェノサイドだったかどうかの判断はまだ下されていない。

 しかし国連の調査団は昨秋、国内にとどまる60万人のロヒンギャがジェノサイドの脅威にさらされていると報告した。司法裁は今回、その内容を大筋で認めたうえで「切迫する重大な危機」がある、と認定した。ミャンマー政府は直ちに具体的な行動をとらねばならない。

 国家顧問であるスーチー氏は国連報告を「難民が誇張した情報に基づく」と否定している。だが、その国連の現地調査を拒んでいるのは当のミャンマー政府だ。これだけロヒンギャの生々しい苦境が伝えられているときに、「内政問題だ」と突っぱねる姿は極めて残念である。

 国民の多数を占める仏教徒の間には、ロヒンギャを不法移民とみる意識が強い。治安などの権限を握る軍に対抗して民主化を進めたいスーチー氏は、世論の支持を維持したい思惑もあるだろう。

 しかし、この多民族国家をまとめるには、多数派と少数派の融和が欠かせない。分断が深まれば治安は悪化し、軍が権力にとどまる口実も与える。長期的に国の発展を阻む迫害を抑えるのは政治指導者の責任だ。

 ミャンマーには今月、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が訪れた。スーチー氏と近年、会談を重ねて関係を深めている。ウイグル問題などを抱える中国は、内政不干渉の主張を共有し、影響力を強めたい狙いのようだ。

 日本政府には、そうした中国への対抗心が垣間見える。安倍首相は昨年、国連から迫害の責任を指摘されたミャンマーの国軍司令官とも会談した。

 ミャンマーは歴史的な親日国であり、かねて日本は欧米の圧力とは一線を画し、支援や対話を通じて民主化を求めてきた。しかし、重大な人権侵害が続いている以上、日本は普遍的価値を守る外交の原則を踏み外すことがあってはならない。

 安倍政権はスーチー氏に対し、司法裁の命令を即時履行するよう明確に求めるべきだ。

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