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 南海トラフで大地震が発生した際、襲ってくる津波にどう備えるか。政府の地震調査研究推進本部が先週まとめた「津波評価」を、地域の防災対策を強化する手がかりにしたい。

 駿河湾から九州沖までのびる南海トラフでは、100~200年ごとに大きな地震が起きてきた。今後30年以内に70~80%の確率で起きると見込まれる大地震の際、津波のリスクはどれほどか。初めて確率で示したのが、今回の津波評価だ。

 政府は8年前、理論的に考えうる最大級の地震が起きた際の津波想定を公表している。今回はこれとは別に、700年間に実際に起きた地震データをもとに、35万通りの津波をコンピューターで予測し、大きさごとの確率をはじき出した。

 浮かび上がったのは、侮りがたいリスクである。

 3メートル以上の津波が「100年に1度」よりも高い確率でくるとされた地域は10都県の71市区町村で、5メートル以上も7都県29市町村にのぼった。この規模の津波が現にくれば、多くの建物が壊れたり流失したりする。

 地震本部によると、「100年に1度以上」とは、人が交通事故でけがをするよりも高い確率だという。人生で1度は遭遇してもおかしくないと考え、備えを急ぐ必要がある。

 8年前の最大津波の発表を受けて、津波避難タワーの建設や公共施設の高台移転を進めている自治体は少なくない。一方で、大がかりな防潮堤の建設、避難道路の造成、住宅の移転促進などには膨大な時間と費用がかかり、「途方にくれてしまう」との声も聞かれる。

 だからといってあきらめたり立ち止まったりせずに、優先度を考えながら対策を進める。よすがとなるのが今回の津波評価だ。まずは3メートル以上の津波を前提に、避難できる態勢を築く。そのうえで「次」への備えをする。一歩ずつ安全度を上げていくことが肝心だ。

 そのためにも、今回示された数字がもつ意味や8年前の発表が狙ったものとの違いなどを、それぞれの自治体が正しく理解しなければならない。

 地震本部は来週から、対象となった都府県や政令指定市の担当者を対象に説明会を開く。有効な施策につながるよう、認識を深める場にしてもらいたい。

 自治体の務めはインフラの整備だけではない。地域のリスクを住民や企業に周知することも大切な仕事だ。ふだんから一人ひとりが正確な認識をもって初めて、「揺れたら逃げる」を実践することができる。

 地域社会が危機意識を共有することは、津波への備えを万全にする礎である。

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