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 気候変動が危機的になりつつあるいま、喫緊の課題から逃げる口実にしてはならない。

 地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定の下で中長期的に温室効果ガスを削減しようと、政府がまとめた「革新的環境イノベーション戦略」である。

 国際的な研究拠点を国内に設け、先進諸国と協力して二酸化炭素(CO2)を減らす新技術を開発する。そうしたイノベーションにより、温室効果ガスを出さない脱炭素社会をめざす。新戦略について、安倍首相は施政方針演説でそう説明した。

 パリ協定は、産業革命以降の気温上昇を1・5度に抑えるのが努力目標だ。それには、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにしないといけない。あらゆる手立てを総動員しなければ実現は難しく、新戦略に沿って技術革新をめざすことは必要だろう。

 ただ、これからの10年間で排出をいかに削減できるかが、未来を左右することを忘れてはならない。科学的には、30年の時点で45%削減できていないと、「50年ゼロ」の実現は難しいとされているのだ。

 すでに気温上昇は1度を超えており、各地で異常気象や自然災害が起きている。実現性がはっきりしない技術革新ばかりに望みをかけ、目の前の課題に背を向けていては、気候危機を乗り越えられない。

 とりわけ日本が急ぐべきは、石炭利用からの撤退と再生可能エネルギーの拡大だ。

 欧州を中心に20~30年代の脱石炭を決める国が相次いでいるなか、安倍政権はいまだに「30年度の電源構成の26%を石炭火力でまかなう」という方針を変えていない。そのせいで国内には20基ほどの石炭火力の新設計画があり、東南アジアなどへの輸出も続いている。

 身を切るような排出削減が急がれるときに、天然ガス火力の2倍のCO2を何十年にもわたって出し続ける石炭火力を新設する。そんな振る舞いは時代錯誤というほかない。

 政府は早く脱石炭の大方針を決め、具体的な目標年と道筋を検討するべきだ。同時に、炭素税や排出量取引などのカーボンプライシングを導入して石炭が割高になるようにし、事業者が石炭火力から撤退するよう促さねばならない。

 並行して太陽光や風力など低炭素電源を拡大すれば、電力の確保と排出削減を両立できる。

 右手で石炭を使いながら、左手で脱炭素イノベーションに取り組んでも、日本が真剣に気候危機に立ち向かおうとしているのか、疑われよう。

 問われているのは、安倍政権の危機感である。

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