[PR]

 中国・武漢で発生した新型肺炎の広がりが止まらない。中国国内の患者は約6千人にのぼり、死者は100人を超えた。

 日本でも、現地への渡航歴がない男性の感染が確認された。人から人への国内で初の二次感染だ。潜伏期間中にも伝播(でんぱ)する可能性が指摘されており、事実ならばさらなる拡大が見込まれる。長い戦いになる覚悟をもって、着実に備えを固めたい。

 きのうは政府が派遣したチャーター機で206人が帰国した。症状がなくても2週間は自宅や宿泊先から外出せず、様子を見るなどの措置を求める。航空機の派遣はこの先も予定されている。日本に戻った人たちが静かな環境で過ごせるよう、関係者は配慮する必要がある。

 政府は、新型肺炎を感染症法上の「指定感染症」とし、厚労省が定めた設備を備えた医療機関で処置に当たることにした。

 だが感染した人がそうとは知らずに、指定医療機関ではないクリニックなどを訪れてもおかしくない。どこで患者が見つかっても、適切迅速に対応できる態勢を整えたい。国と自治体の役割分担や情報共有のあり方についても、改めて確認し齟齬(そご)のないようにしてほしい。

 思い起こすべきは過去の教訓だ。09年に発生した新型インフルエンザでは、発生国への渡航歴に注目して水際で警戒を続けた。ところが実際は、現地に行っていない高校生から発症者が見つかり流行へとつながった。

 強い毒性をもつという想定も違って、症状の軽い患者を中心に急速に拡大。指定医療機関では収容しきれなくなる恐れが生じて、混乱も起きた。

 未知の感染症への対応は、ときに相反する要請の間で難しい判断を迫られる。ひとつは、常に最新の知見に基づき、被害を過小に見積もらないこと。もうひとつは、行動の自由を制限する措置は最小限とし、人権を不当に抑え込まないことだ。

 新型肺炎は今のところ、同じコロナウイルスによる重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)に比べて、重症化する割合はそれほど高くないとみられる。仮に患者が増えて指定医療機関では対応できなくなったとき、軽症者については、通常の病院への入院や自宅での療養に切り替えることも、選択肢として頭の隅に用意しておきたい。

 緊急事態宣言をいったん見送った世界保健機関(WHO)の指導力も問われる。必要十分な情報を速やかに開示するよう中国政府に求めるのはもちろん、治療や感染防止のための物資と人員を提供するなど、積極的に支援する必要がある。日本も協力を惜しんではならない。

こんなニュースも