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 英国が現地時間の31日夜、欧州連合から離脱する。

 EUの一つ屋根の下に同居した50年近い歩みを終え、異なる道に向かう。欧州とは何か、国々の統合をめざす意味は何か。世界が改めて熟考を巡らす節目として捉えたい。

 二つの世界大戦を経た欧州は、不戦の誓いを出発点とし、平和と繁栄のために国境を取り払う理想を掲げた。国家主権を超える組織をめざし、地域の融合へ向けて拡大を続けた。

 加盟すれば欧州市民として、自由に移動できる。どこでも学び、働き、暮らせる――。それが普通になり、自らのアイデンティティーを「欧州人」と自覚するEU世代も増えてきた。

 冷戦直後の和平ムードも追い風に、旧ソ連圏を含む28カ国まで広がった。その歯車が初めて逆行する事態は、歴史にどう刻まれるだろうか。

 離脱を僅差(きんさ)で選んだ4年前の国民投票の頃から、各国で大衆扇動的な政治が台頭した。反EU、反移民、自国第一。看板が何であれ、統合を支えた寛容の理念が挑戦を受け続けている。

 ジョンソン英首相は離脱を前に「ついに我々は法律、国境、カネ、貿易、移民制度の支配権を取り戻す」と宣言した。政治的にはナショナリズムの高揚という目先の効能はあるだろう。しかし、離脱が本当に英国の長期的な利益をもたらすのか、確固たる展望はない。

 英国は今後、EUのほか米国や日本などと個別に自由貿易などの関係を結ぶことになる。各国が注視せざるをえないのは、英国はこれから世界の中でどんな存在になるのかだ。

 切に望みたいのは、開かれた自由な秩序と連携を尊ぶ国であることだ。インドやオーストラリアなど、大英帝国時代の旧植民地からなる英連邦との結束を強めるとの見方もあるが、懐古主義に閉じこもるようでは未来は開けまい。

 EUと袂(たもと)を分かっても、自由、人権、民主主義を重んじる理念の共有は続けられる。米国が自国第一主義に陥る今、自由貿易の枠組みづくりや、核軍縮・不拡散体制の管理など、国際秩序を守る主要国としての立場を見失わないでほしい。

 EUも正念場を迎えている。心配された「離脱ドミノ」の動きはないが、市民に見えにくいEUの統治システムは改革が必要だ。厳然と存在するEU内の経済格差を考慮した柔軟な対応も求められる。

 欧州は、ひとつの世界を築く遠大な実験場である。その希望を後世に引き継ぐためにも、英国、欧州、そして米国、日本を含む各国が、国際協調の価値を再確認しておきたい。

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