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 派遣の意義にも、不測の事態への対応にも、疑問が山積みのままの出航である。国会による不断の監視が不可欠だ。

 海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が中東海域に向けて出発した。今月下旬に到着し、日本に向かうタンカーなどの安全確保に向けた情報収集にあたる。

 期間は1年間で、延長もできる。防衛省設置法の「調査・研究」を名目に、かくも長期間、部隊が海外で活動した例はない。拡大解釈は明らかだ。

 安倍首相は国会で、調査・研究に基づく派遣を「一般化することは毛頭あり得ない」と述べる一方、個別の事案については慎重に判断すると答弁した。今回の件が「先例」とされる可能性は否定できない。

 米国主導の「有志連合」に加わらず、独自派遣の体裁をとったものの、米軍と一体とみられる懸念もぬぐえない。すでに、海自の隊員1人がバーレーンの米中央海軍司令部に詰め、情報共有を始めている。

 現状では、日本関係船舶の護衛は必要ないと、政府は説明している。だが、予期せぬ緊急事態が生じた場合、そのときの状況や国内法、国際法の制約などを考慮し、難しい判断を迫られるのは必至だ。

 政府は、限定的な武器使用が認められる海上警備行動に切り替えて臨む方針だが、日本関係船舶の大半は外国籍である。公海上の船舶は船籍のある国の管轄に属するのが国際法の原則であり、自衛隊にできることは限られる。ソマリア沖で実施している海賊対処と異なり、脅威の対象が明確でないことも対応を難しくさせる。

 いったん遠い海外に派遣されると、国内からの監視の目が行き届かなくなるのは、南スーダンPKOの教訓でもある。

 ところが今回の中東派遣は、国会のまともな議論抜きに決定された。(1)閣議決定時(2)閣議決定の変更時(3)活動終了時――に国会に報告するとされたが、昨年末の閣議決定の際は、その決定文を国会議員に配り、1日だけの閉会中審査で終わった。これでは、実効的なチェックなど望むべくもない。

 国会の会期は6月まである。現地での活動が一定期間を過ぎれば、政府は国会に経過を報告し、質疑に応じるべきだ。事後の検証ができるよう、部隊から届く「日報」を適切に管理しておくことはいうまでもない。

 米国とイランの武力衝突は当面、回避されたが、対立の構図に変わりはない。緊張が再び激化すれば、一瞬の判断が日本の針路を左右する。そこへ軍事組織である自衛隊を送り込むことの重みを、政府も国会も忘れてはならない。

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