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 今国会序盤の論戦が一区切りした。安倍首相が出席する予算委員会が衆参で8日間続いたが、かみ合った議論にはほど遠かった。その最たるものが、昨年の臨時国会から続く「桜を見る会」の私物化疑惑である。

 政権の信頼に直結する問題である。新型肺炎対策や自衛隊の中東派遣などとともに、主要テーマとなったのは当然だ。しかも、本気で疑念を晴らす気があるとは思えない首相の不誠実な答弁が繰り返されては、追及の手を緩めるわけにはいかない。

 自らの正当化に腐心する首相のつじつま合わせは、もはや限界だ。桜を見る会の前日に例年開いていた夕食会について、後援会の主催なのに政治資金収支報告書に記載していないことをめぐる釈明が典型である。

 首相はこれまで、参加者が直接、1人5千円の会費をホテルに支払ったので、後援会に収支は発生せず、報告の必要はないとしてきた。それではホテル側と契約したのは誰なのか。野党からそう詰められた首相は、契約主体は後援会ではなく「参加者個人」と答えたのだ。

 約800人に及ぶ参加者が個別にホテルと契約したという説明は、常識的に無理がある。後援会が主体と認めると、報告書への不記載を問われかねないためのこじつけではないか。

 予算委では、立憲民主党の辻元清美衆院議員が「安倍方式」と名付け、他の議員が同様にしてもいいのかとただした。首相は「同じ形式であれば問題ない」と言わざるを得なかった。政治資金の流れを透明化する政治資金規正法の趣旨を骨抜きにする行為を、首相自ら容認するとは、無責任極まりない。

 政府は招待者名簿が残っていないことを盾に、さまざまな説明を拒否している。電子データも廃棄したというが、「不正侵入を助長する恐れがある」として、コンピューターの履歴の確認には応じない。理由を補足した菅官房長官は「同じシステムを国家安全保障局が利用している」として、「国家機密」まで持ち出して情報漏洩(ろうえい)の危険が増すと答えた。データ廃棄の日時を公表しただけでそうなるとは信じがたい。これも無理を重ねた結果の苦しい言い訳だろう。

 首相は施政方針演説の冒頭、第2次政権発足時にあった「日本はもう成長できない」という「諦めの壁」を、7年間の政策により「完全に打ち破ることができた」と自画自賛した。

 一方で、首相自らが「諦めの壁」をつくろうとしているのではないか。その場しのぎで時間をかせぎ、疑惑への追及の矛先が鈍るのを待っているようにみえる。完全に打ち破られるべきは、こちらの壁もそうである。

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