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 ネアンデルタール人やマンモスのいた地質年代(77万4千~12万9千年前)が、「チバニアン」と呼ばれることになった。ラテン語で「千葉時代」という意味だ。

 千葉県市原市にある地層が、この地質年代の始まりをはっきりと示している。研究者らでつくる国際地質科学連合(IUGS)が、そう認めた。

 46億年に及ぶ地球史に、日本の地名が刻まれるのは初めてとなる。自然科学で日本語が正式名称になるのは、理化学研究所のチームが発見した113番元素ニホニウムに続くものだ。

 地球の歴史は、気候変動や生物の大量絶滅などの特徴で区分されている。各年代の名前は、代表する地層の所在地名などにちなんで決められてきた。恐竜が栄えたジュラ紀や、三葉虫など多彩な生物が登場したカンブリア紀のように、欧州の地名に由来するものが多い。

 チバニアンを特徴づけているのは地磁気の逆転である。

 地球のN極とS極は過去に何度も入れ替わっており、直近は77万年ほど前になる。その痕跡が市原市の地層に残るとして、国立極地研究所や茨城大などのチームがIUGSに申請した。イタリアにも同じような地層があったが、市原市の方が学術的に意味があると判断された。

 そもそも地磁気の逆転は、京都帝国大の松山基範(もとのり)教授が世界に先駆けて提唱したものだ。1世紀近い年月をへて、ゆかりの地質年代に日本の地名が刻まれたことになる。幅広い分野の研究者が手を組み、地道にデータを積み上げた成果である。

 地元の協力と支援が後押ししたことも心に留めたい。行政は条例を定めたり、周辺の公有地化を進めたりした。地域の人たちも見学路を整え、ガイド役を買って出た。学界と地元が手を組んだたまものといえよう。

 地質学には、地球の歴史を探検するだいご味がある。チバニアンをきっかけに地質学に興味をもつ若者が増えれば、今後の教育や研究の底上げも期待できるのではないか。

 その意味で、化石標本や地質学の解説パネルなどを展示する仮設施設を、市原市が現地につくったのは意味がある。観光客や地質学ファンの知的好奇心を満たすよう、研究者と協力して展示を充実させてほしい。

 同時に忘れてならないのは、地球史の遺産として地層を後世に伝えていくことだ。チバニアンの命名にともない、重い責任を負ったともいえる。

 昨年秋の台風の際には、地層そばの川が増水して見学者用の階段が一部流された。自然災害やいたずらなどで地層が損壊しないよう、万全を期したい。

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