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 気候危機に立ち向かうべきときに、温室効果ガス排出の多い石炭火力発電所を海外に輸出していいのか。そんな議論が、にわかに注目されている。

 きっかけは、小泉環境相が先月、日本の公的資金が使われる見込みの海外事業が適正かどうか、環境省として調べる意向を明らかにしたことだ。

 たとえばベトナムのブンアン2石炭火力発電所の計画には三菱商事の子会社が出資し、国際協力銀行が融資を検討しているが、工事などを受注するのは中国と米国の企業の予定だ。小泉氏は「この実態はおかしい」として、ほかの案件についても調査する考えを示した。

 といっても、日本企業に受注させよという話ではない。

 異常気象や自然災害が各地で相次いでおり、被害の深刻化を回避するには、地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定の下、産業革命以降の気温上昇を1・5度に抑える必要がある。それには、2050年に二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにしなければならない。

 石炭火力は最新型でも天然ガス火力の2倍の排出量があるため、20~30年代に発電所の稼働ゼロをめざす国々が欧州などで増えている。

 にもかかわらず日本は、主要7カ国(G7)で唯一、国内に数多くの新規計画を抱え、国際的な風当たりが強い。

 批判に輪をかけているのが、プラント輸出や投融資を通じ、東南アジアなどで多くの石炭火力の新設にかかわっていることだ。安倍政権は「相手国から要請がある」「高効率な設備に限る」など四つの条件を満たした場合、輸出を許容する政策を変えていない。

 「しかし、高効率といってもCO2排出量が従来より数パーセントほど減るにすぎない」。自然エネルギー財団は今月、そう指摘する報告書をまとめた。いくら高効率でも、新設すれば今後40年にわたり多量のCO2を排出することに変わりはなく、パリ協定がめざす脱炭素化に逆行するのだ。

 たとえ日本が撤退しても、中国などの企業が受注するだけでは――。そんな声もある。そうであっても、輸出から率先して撤退し、他国にも同調するよう促すのが、日本のとるべき姿勢ではないか。

 自然エネ財団によると、安倍政権がめざすインフラ輸出30兆円のうち、石炭火力は民間投資を含めても2%に満たない。そのせいで「脱石炭に後ろ向き」と批判されては割に合わない。

 国内で再生可能エネルギーを広げ、ノウハウを途上国に輸出する。求められるのは、気候危機を助長しない支援である。

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