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 いまの保釈制度にどんな問題があり、いかなる対処をすべきか。その議論が始まる。

 保釈が認められた刑事事件の被告が、その後、行方をくらます事例が続いたのを受けて、森雅子法相が防止のための法整備を法制審議会に諮問した。

 逃走事件が起きれば、裁判や刑の執行に支障が出るばかりでなく、地域に不安と混乱をもたらす。制度や運用に見直すべき点があれば、見直さなければならない。

 保釈は、被告が社会生活を営みながら、裁判で十分な防御活動を行うためにある。推定無罪の原則に基づくもので、刑事司法の適正さを保つうえで欠かせない措置といえる。

 しかし日本では、その趣旨に反する長期の身体拘束が当然のように行われてきた。行動の自由を奪うことで、捜査側に有利な供述を得ようとする「人質司法」との批判が出るゆえんだ。

 それが近年、冤罪(えんざい)事件への反省や裁判員裁判の導入を背景に、改善の方向に進んできている。流れを後戻りさせてはならない。審議にあたり、法制審はまずこの点を確認し、共有する必要がある。捜査・裁判上の要請と人権との均衡をどう図り、あるべき姿を探るか。多様な角度からの議論を望みたい。

 具体的な論点のひとつは、保釈後に逃げてしまう行為を、刑務所からの逃走と同じように、罪に問えるようにすることだ。現在これを罰する法律はない。行方を追うために通話記録を押収するなど、強制力をもった捜査ができる規定も欠く。何らかの手当てが必要だろう。

 もうひとつが、保釈の際、所在地を把握できるGPS(全地球測位システム)機器を被告に装着させることの是非だ。

 海外で多くの実施例があり、弁護人の間にも「拘束が続くよりもはるかに良い」との声がある。十分検討に値する。

 とはいえ、他者に常に居場所を知られるのは、人権の重大な制約だ。装着させることを禁じる規定はないのに実施されてこなかった大きな理由だ。

 カルロス・ゴーン被告のような明確な意思と計画に基づく逃亡の防止に、どこまで有効か。機器や監視体制の構築・運営にかかるコストに見合う効果があるか。また、いったん導入されると、保釈条件にGPS機器の装着が安易に採り入れられる懸念もある。結論ありきでなく、要件の絞り込みを含めた慎重な仕組みづくりが求められる。

 今回の諮問は諮問として、保釈の可否を判断する裁判官の責任は重い。事件の性質や被告の立場、取り巻く状況を見極め、適切な判断を下しているか。不断の点検を怠ってはならない。

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