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 深刻な気候危機を避けるために、温室効果ガスをもっと削減せねば――。国際社会のそんな機運に、日本が水を差すことがあってはならない。

 地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定のもと、政府が再提出を検討している国別の削減目標である。

 これまで目標を国連に出したのは日本を含め180カ国を超える。各国はそれぞれの中身を見直し、11月に英国である第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の9カ月前、つまり今月末までに再提出することになっている。

 異常気象や自然災害が多発しており、再提出の際、目標を大幅に引き上げるよう国連は求めている。各国が現在の目標を達成しても産業革命以降の気温上昇は今世紀末に3度に達し、「できれば1・5度に抑える」というパリ協定そのものの努力目標に遠く及ばないからだ。

 「1・5度」の実現には「2030年に10年比で45%削減」が求められる。欧州連合(EU)は「1990年比で40%削減」という現在の目標を50%に高め、できれば55%に増やそうとしている。気候危機の切迫度を踏まえた動きといえよう。

 日本の目標は「13年度比で26%削減」で、90年比に換算すると18%削減にとどまる。ところが、政府は見直しの議論を進めておらず、温暖化対策に熱心な企業やNGOの間で「低い目標のまま据え置くのでは」との危機感が広がっている。

 日本が消極的な姿勢では、各国の取り組みにも悪影響が及びかねないからだ。

 対策強化の意思を表明している国は100カ国を超えているものの、これまでに目標を再提出したのは4カ国にとどまる。多くの国々が様子見をしているなか、排出量が世界5位の日本が早々に目標を据え置けば、対策強化に向けた国際的な動きの出ばなをくじく恐れがある。

 広く議論をすることもないまま、見劣りのする目標を拙速に提出するのは賢明ではない。COP26までに充実した中身に練り直すことこそ、責任ある「大国」の振る舞いである。

 目標の上積みは、石炭との決別や再生可能エネルギーの一層の拡大で実現できる。間もなく検討が始まるエネルギー基本計画の改定で、脱炭素社会への大転換を図るべきだ。

 いうまでもなく、温暖化を抑えるには、排出量1位の中国に対策強化を促し、2位の米国に協定離脱を思いとどまらせることが欠かせない。日本はEUと手を組み、両国に働きかけていかねばならない。

 気候危機の回避に向け、日本の意欲が問われている。

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