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 ■共立女子大×朝日新聞

 変化の激しいビジネスの世界で求められるこれからのリーダーシップとはどのようなものだろうか。「女性の自立と自活」を建学の精神に掲げてきた共立女子大学は今年4月、「ビジネス学部」を新設し、ビジネスの幅広い知識とリーダーシップの習得を目指す。同大学と朝日新聞社は、今年度の最終回となる教育会議を開催。「自分らしく生きる~新しいリーダーシップを求めて」と題して新時代のリーダー像を議論した。【東京都千代田区の共立女子大学・共立講堂で1月26日開催】

 ■基調講演 やる気バックアップ、SNSも活用 サイバーエージェント社長・藤田晋さん

 私は今46歳で、高校まで福井県で育った。大学時代にベンチャー企業でアルバイトをした際、「自分でもできるんじゃないか」と思って起業した。今日は自分の経験をふまえながら、「インターネットの時代に必要なリーダーシップ」について話したい。

 インターネットの普及を受け、「社長」像が昔と今とで大きく変わった。

 昔は「社長=偉い」。社長は謎のベールに包まれた存在で、部下は社長の言うことをきく時代だった。ある意味、社長は楽だった。

 ところが今は、ネットやSNSで情報が外に出やすい。社長が言ったことは社内にもあっという間に広がる。発言や意見がたいしたことないと「社長も自分たちと変わらない存在じゃないか」と思われてしまう。社長の姿が部下にばれてしまう時代になった。

 その点で、逆に考えればネットをうまく使うことも可能な時代だ。「会社が何を目指しているのか」「どんな方針で事業をはじめるか」をブログに書けば、株主、取引先ばかりでなく社員も見る。人を集めて引っ張っていくことがネットを通じてできるようになった。

 サイバーエージェントは国内外に拠点があり、従業員は5千人を超える。採用活動および社員のやる気バックアップに全力を尽くしている。

 採用についていえば、事業計画に合わせて採用を行うのではなく、集まった人材に合わせて事業内容を決める。金融業やインフラ事業はやりたがらない人材が多いが、TV事業やゲーム事業にはおもしろがって取り組む。

 社員のやる気については、若手を育成するため20代でも重要な役職をすぐに任せ、新卒のグループ会社社長を78人も輩出した。失敗したとしても、挑戦して得た経験は社内の経営資源になる。惜しみなくセカンドチャンスも与えている。また月に一度、ITを使った組織診断ツールで社員のコンディションを把握し、やる気を失わせるパワハラやセクハラの芽を摘むようにしている。

 今はネットで何でも調べ上げられるから、情報を独占できない。意図や下心さえ正直に語ってしまったほうが他人の支持を得やすい。また、今まで直接向き合うことのなかった人とも向き合わねばならない。良い文章を書いて、発信できる力もリーダーには必要だ。その意味で国語教育が大変重要だと思う。

 私の根底にあるのは「サーバント(奉仕型)リーダーシップ」。社員にセルフリーダーシップを求める一方、社長は奉仕して育成の場を一生懸命提供する。今は社長の姿がガラス張りで見える時代であり、この型はリーダーシップにおけるひとつの正解ではないかと考えている。社員を頑張らせることが私のリーダーシップであり、経営戦略だ。

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 ふじた・すすむ 1998年にサイバーエージェントを設立。2000年に当時最年少社長として26歳で東証マザーズ上場。インターネット産業での高い成長を遂げる会社を目指す。会社のビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」。

 ■パネルディスカッション

 基調講演に続き、サイバーエージェント執行役員・採用戦略本部長の石田裕子さん、共立女子大学ビジネス学部学部長の植田和男さん、同ビジネス学部専任講師の岩城奈津さんが「AI時代を生き抜くリーダーシップ」について意見を交わした。藤田晋さんも引き続き参加した。(進行は原真人・朝日新聞編集委員)

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 ――人工知能(AI)が人間の仕事を奪うといわれています。そんな時代におけるリーダーシップとは何かについて議論します。まずは新たに設けるビジネス学部学部長に就任する植田教授から。

 植田 AI時代にどんな仕事がなくなるのかについて、すでに多くの研究がなされている。ただ一方で、AIが対応できない新しい仕事や業務も間違いなく出てくる。新しい仕事をする上で、多様な分野から人が集まってチームを組むケースが増えるだろう。メンバーの力を最大限いかすリーダーシップが必要になる。新たにできるビジネス学部では、ビジネスの基礎知識を身につけるとともに、周囲と協力して成果を出せる「リーダーシッププログラム」にも力を入れる。丸の内や大手町に近いという共立女子大学の地の利をいかし、企業と連携した課題解決型プログラムを行う。

 岩城 AIとは「闘うより共存していく」という立場だ。AIができないことをどう考え、どうしたら自分が所属するチームの成果に貢献できるか、ポジティブに考え、対面以外でも人を巻き込む力が必要になる。先ほどの藤田さんの基調講演でも出たが、読み書きの力、とりわけ「書いて伝え、受け取る」コミュニケーションの力も大切だと思う。

 ――AI時代と仕事について、サイバーエージェントはどう考えますか。

 石田 我が社はAI関連事業に積極的に参入し、作業効率化のためのツールも取り入れている。AIは仕事を最適化できても、まったく新しい業務には弱い。雇用を脅かす存在であるとは思うが、活用法次第では人間と補完的な関係になっていくはずだ。

 藤田 実は当社には、「AIに仕事を奪われる」という感覚があまりない。AIが業務を効率化するなら、ほかの仕事を創造すればいい。例えば、石田はもともと広告の営業をしていて、その後インターネットメディアのプロデューサー、子会社の社長をやって失敗し、その上で今は人事のトップにいる。人間には様々な可能性がある。

 ――女性キャリアのトップにいる石田さんでも失敗があると?

 石田 逆に「失敗しかない」。2社の子会社の社長を任せてもらったが、いずれも撤退した。ただ、失敗して終わりではなく、どう次につなげ行動に移すかを常に考えてきた。

 ――女性のキャリアについて、大学としてどう考えますか。

 植田 女性に管理職になるような道を用意しても応募する人が少ないと言われる。こうした問題を、ビジネス学部の教育でこじあけたい。

 岩城 専門能力があっても管理職になろうとしない女性が多いという現実は確かにある。ビジネス学部は経営、マーケティング、経済、会計の主要4分野をしっかり学ぶ。合わせてリーダーシップを学び、活躍を目指して欲しい。課題をチームで解決するよう目指し、「どうして成功したのか」「どの分岐点から失速してしまったのか」と議論し、プロセスを分析、共有することで、失敗も次につなげる意欲を生み出したい。

 ――社会の高齢化との関連でうかがいます。サイバーエージェントは終身雇用をめざしていると聞きました。年齢構成が上がっても革新性は維持できるでしょうか。

 藤田 私が立ち上げた事業に、「Mリーグ」(麻雀〈マージャン〉リーグ)がある。成績上位には50代、60代が並んでいる。麻雀は経営と同じ側面があり、若い頃にはできないような辛抱、忍耐、状況判断が求められる。経験、精神力も重要なので、40代半ばからが強い。働いて活躍できる年齢は延ばせるのではないかと考えている。

 ――私は大学で授業をする際、学生にアンケートをとります。この3年間で延べ1千人以上に聞いて、99%は未来に悲観的です。若い人たちにメッセージを。

 石田 10代、20代は優柔不断で、「自分にはできない」と思いがち。やってみて失敗して、そこから学んで次にいかせばいい。他者の気持ちを理解して、相手に寄り添う。AIにはできない新しい価値を創造する。これがAI時代に必要とされるリーダーシップだと思う。人間力を高めれば、必然と必要とされる人材になれる。

 岩城 藤田さんが大学卒業前後にベンチャー企業で働き、「自分でもできるんじゃないか」と思ったという話を受け止めたい。女子学生の皆さんが「大変だけど面白そう」「自分ももっと成長できる」と思えるような学びを、ビジネス学部でぜひ提供していきたい。

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 うえだ・かずお 最終学位はマサチューセッツ工科大学・経済学博士。専門はマクロ経済学、金融論、国際金融論。元日本銀行政策委員会審議委員、東京大学経済学部長などを経て、共立女子大学ビジネス学部学部長、教授。

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 いわき・なつ 同志社大学文学部卒。英国国立ウェールズ大学カーディフ校ビジネススクール経営学修士(MBA)、博士課程単位取得後退学。長年ダイバーシティー&インクルージョンコンサルタントとして組織開発、リーダーシップ開発に従事。

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 いしだ・ゆうこ 2004年、新卒でサイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門で営業局長・営業統括に就任後、スマートフォン向けネットサービスのプロデューサーを経て、2社の100%子会社社長に就任。16年から執行役員に就任。

 ■腕力でなく「コラボする力」 会議を終えて

 人工知能とロボットの急進化による恩恵は大きいが、劇的変化がさまざまなショックももたらすもろ刃の剣だ。ホワイトカラーの仕事の半分近くが将来なくなると予測されている。先が読みにくい時代。どう備えたらいいか。少なくとも過去のモデルはあてにならないと覚悟せねばならない。

 変化の荒波に真っ先に洗われるのが若い世代、そして彼ら彼女らを受け入れる企業社会だ。職場環境で高評価を受けるサイバーエージェントのありようは、これからの働く環境、経営のあり方を考えるうえで貴重なヒントになる。

 藤田晋社長の思考法は既存の経営の常識を覆す新鮮なものだった。たとえば「社長は社員の上に君臨するのでなく、社員を支える土台」と。さらに「新しい事業に合わせて人材は募らない。今いる社員の関心や能力に合わせて新規事業を考える」。

 どうやら、これからのリーダーに求められる資質は組織を束ねる腕力ではないらしい。チーム一人ひとりの能力を生かせる環境をいかに整え支えられるか。それはまるで裏方のような能力だ。いわば「コラボ(協力)する力」とでも形容できようか。(原真人)

 <共立女子大学> 1886年、女性が専門的知識と高度な技能を習得し、自主性と社会的自立を育むための「共立女子職業学校」として創立。都心の女子総合大学として家政学部・文芸学部・国際学部・看護学部を有し、文理両領域の学びと高い専門性を深める。2020年4月、女子大学では初となる「ビジネス学部」を新設する。

 ■朝日教育会議

 「教育の力で未来を切りひらく」をテーマに、来場者や読者と課題を共有して解決策を模索する連続フォーラムで、2019年度は14の大学・法人と朝日新聞社が協力して様々な社会的課題について考えました。フォーラムの詳しい情報や内容をまとめた記事については、特設サイト(http://manabu.asahi.com/aef2019/別ウインドウで開きます)をご覧下さい。

 共催の大学・法人は次の通りです。

 神田外語大学、京都女子大学、共立女子大学、慶応義塾大学、公立大学法人大阪、成蹊大学、拓殖大学、千葉工業大学、東京工芸大学、東北医科薬科大学、東洋英和女学院大学、法政大学、明治大学、早稲田大学(50音順)

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