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 「朝日 健康・医療フォーラム2020」が、大阪市北区の中之島会館で1月25日に、2月8日には東京・有楽町の朝日ホールで開かれた。東京会場では「生涯現役」をテーマにした討論のほか、専門家が口腔(こうくう)ケアや旅行・外出を通じた健康づくりを解説。大阪会場では健康寿命を延ばす生活習慣や認知症への備えについて講演があった。

 ■内田さん「住宅ローン終わるまでは」 大石さん「衰え嘆かず誇り持ちたい」

 内田春菊さん(漫画家)

 大石静さん(脚本家)

 渡辺昌彦さん(北里大学北里研究所病院院長)

    ◇

 ――きょう登壇されたみなさんは3人とも連載「患者を生きる」に登場して下さいました。共通点は「腸」です。渡辺先生は腸専門の外科医。内田さんは大腸がんとその手術による人工肛門(こうもん)を、大石さんは腸閉塞(へいそく)を体験されました。

 共通点はもう一つ。3人とも60代で現役です。「生涯現役」をまっとうするにはどうすればいいか。現役のイメージは人それぞれですが、まず、みなさんの現役像を教えて下さい。

 内田 私は漫画を描くほか小説も書き、歌も歌い、俳優もやり、映画も撮っています。どれもお金になるかと言えば決してそんなことはない。でも、住宅ローンが73歳まであるので、何をしてでもローンを払い終わるまでは働きたい。それが私にとっての現役生活です。

 大石 夢は生涯、現役の脚本家でいることです。私にとっての現役は、他者を愛する心があること。仕事をし、報酬を得る力があること。そして、仕事が評価にさらされる苦しさと喜びがある状態だと思っています。

 渡辺 妻からは「死ぬ3日前まで働け」と言われています。私には仕事しかありません。体力には限界があり、手術はいずれ難しくなるでしょうが、患者さんの話をゆっくり聞くなど、「患者さんと向き合う」医師として、生涯現役でいたいです。

 ――現役でいるには心身の健康が欠かせません。50代の聴講者から「心身の衰えとどう向き合えばいいのか」という質問をもらいました。

 渡辺 いま66歳ですが、ずっと医者の不養生でした。昨年ついに体力の限界を感じ、いつも患者さんに実行するよう言っている「バランスのとれた食事と運動」を、初めて自分も実践し始めました。

 毎朝、ラジオ体操をしています。受け売りですが、ラジオ体操は全身の筋肉すべてを一度は動かせるそうです。朝晩、スクワットもしています。

 大石 体力の衰えを寂しく思う気持ちはありますが、すべての生命の宿命で、嘆いてもどうにもならないことです。

 20年に1度遷宮される伊勢神宮の真新しい白木を美しいと思うように、多くの日本人は新しいものが好きです。そして、若いものを尊いと思う。でも、長く生きてきた私たちが、なぜ気後れしなければいけないのでしょうか。我々は「新しいものだけが尊い」という考えをリセットした方がいいと思います。

 確かに長く生きていると記憶力も体力も落ちる。でも、若い人には見えないことが見えるようになります。そこに自信を持ちたいです。

 内田 体力の衰えはあまり自覚していませんが、4年前に大腸がんの手術をしたのをきっかけにお酒をやめ、恋愛もやめました。恋愛はいい面もたくさんありますけれど、私の場合はそうならないので。その結果、非常に体調がいいです。

 ――現役でいる上で、仕事が大切だという方は多いと思います。聴講者から「大石さんや内田さんのように定年のない職業を見つけるにはどうしたらいいか」という質問がありました。

 大石 もう一人の自分と語り合ってみてはいかがでしょう。私は脚本が行き詰まったとき、自分の中で大石静を二人に分裂させ、もう一人の大石静に「どう思う?」と聞きます。「こうしたら」と返ってきたら、「そんなことはもう考えたわよ」と言う。するともう一人が「じゃあ、これは?」と再提案してきて……といった具合に対話していくと、道筋が見えてきます。

 知人に、テレビ局の役員を経て73歳で俳優学校に通い始め、オーディションを受けて俳優になった方がいます。誰かに聞くのではなく、自分と語り合うことでしか、その問題は突破できないと感じます。

 内田 ユーチューバーになればいいと思います。得意な料理をしながら「ここでしょうゆを入れて、あ、入れ過ぎちゃった!」なんてところをスマートフォンで録画したらいかがでしょうか。そういう動画がほほえましくて好き、という視聴者も絶対にいると思います。

 現在は、ユーチューブやSNSで発表し続け、それが書籍になるというケースもたくさんあります。年を取ってから写真や絵を始め、それが職業になることもある時代です。

 ――70代の方から「年寄りが生涯現役と頑張ることが若い人の迷惑にならないでしょうか」という質問をもらいました。

 渡辺 こちらから若い人たちと交わるような環境をなるべくつくることで、自分が持っていないものをお互いに見つけられるのではないかと思います。

 内田 漫画の世界では、雑誌のような紙の媒体はページの取り合いになり、いつまでも年寄りが描いていると若い人がデビューできない、という問題が生じます。でも、ウェブマガジンはページの制約がありません。若い人に配慮するなら、インターネットなどデジタルの方に目を向けたらどうでしょうか。

 大石 質問者の発想は、新しいものが尊いという思想に侵されすぎだと思います。自ら引く必要はなく、求められればやる、くらいの姿勢でいい。長く生きてきたことに誇りを持ちたいです。

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 うちだ・しゅんぎく 漫画家として「南くんの恋人」など人気作多数。作家や俳優、映画監督、歌手でもある。

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 おおいし・しずか 1997年、向田邦子賞と橋田賞を受賞。最新作は「知らなくていいコト」(日本テレビ)。

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 わたなべ・まさひこ 慶応義塾大医学部卒。1992年、大腸がんの腹腔(ふくくう)鏡手術を国内で初めて成功させた。

 ■腸整えて「アンチエイジング」 渡辺昌彦さん

 腸は、食物の栄養を吸収し、老廃物を便として出しています。腸内細菌も大切な役割を果たしていて、その数は200兆とも500兆とも。全体像はまだ不明ですが、食物の栄養を吸収し、様々な化合物を分泌します。「善玉菌」と呼ばれる腸内細菌の分泌物は、体を守る免疫の機能を支えてくれています。

 しかし、加齢とともに腸の動きは悪くなります。筋力も弱って腹圧がかけづらくなる。すると、便秘など排便に支障が出やすくなります。ビフィズス菌のような善玉菌も減ってきます。

 加齢に伴う悪影響は、どうすれば抑えられるでしょうか。いくつか考えられる「アンチエイジング」の方法があります。

 腸の健康状態を知るバロメーターは便です。排便障害を防ぐにはまず、毎日同じような時間に起き、朝食を食べ、トイレに行くことです。便が出るかどうかにかかわらず一連の行為を習慣化することで、体が慣れ、排便しやすくなります。

 腸の働きを活性化し、排便を促すのに筋肉は欠かせません。特に胸より下の筋肉が大切です。軽くていいですから、日ごろから運動を心がけましょう。胃腸は神経と直結していますから、ストレスをためない生活も望ましいです。

 そして、バランスのいい食事と十分な水分をとって下さい。体にいいと考えられるビフィズス菌や納豆菌、こうじ菌を含む食品がおすすめです。果物やハチミツのように果糖やオリゴ糖を含む食品を同時に食べることで、善玉菌が増えるのを助けられます。海藻やコンニャクなどは水溶性の繊維が豊富です。

 ■「患者を生きる」4000回へ

 「患者を生きる」は近く4000回を迎えます。連載は2006年4月に始まり、がんやうつ、認知症といったさまざまな病気の患者や家族の姿を通し、医療を取り巻く問題を考えようとしてきました。これからも、患者や家族のみなさんの立場に立った連載を続けていきたいと考えています。

 ◆総合司会(東京会場) フリーアナウンサー佐藤美樹さん

 ◆コーディネーター 科学医療部・大岩ゆり、写真(東京会場) 映像報道部・瀬戸口翼

 《主催》朝日新聞社

 《後援》日本医師会、日本製薬工業協会

 《協賛》カゴメ、終活ねっと

 (18面に続く)

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