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 「性的同意」という言葉を知っていますか? 性行為の前に互いの同意を確認できたかどうか。それによって結びつきが強まる場合もあれば、おざなりにしたために性暴力の加害者・被害者になることもあります。とはいえ、実際に確かめるには難しさも伴うようです。なぜ気持ちを言葉にしづらいのか。相手が同意したと思ってしまうのか。一緒に考えてみませんか。

 ■家に行く≠同意/妊娠したかと眠れず/言葉で聞けていない

 アンケートに寄せられた声をご紹介します。

 ●相手思いやる性教育を

 学校で教わる性教育は相手を思いやるということを教えない。性的同意についても教えることが必要だと思う。言葉でしっかり確認をとってもムードなんか壊れないはずだし、それで壊れるような関係は危ういと思う。(青森県・10代女性)

 ●日本では「はい」が良い子

 日本ではいまだに、子どもたちはなんでも「はい」と答えるのが良い子で、「嫌だ」と言うのはワガママだ、と言われて育ちます。もっと「自分の意思を大切にし、相手に伝える」ことを教えるべきです。自分や相手の心身を守ることにつながるからです。(茨城県・30代女性)

 ●空気壊さぬ方法は

 性行為に至るときに、空気を壊さずに確認をとる良い方法を知りたい。(海外・30代男性)

 ●好意があっても違う

 出会い系アプリで知り合った人の家に、私はその人と話してみたかったという理由で行ったのに、家に行く行為=性的同意と思われて、いきなり手を握られキスをされた。オーラルセックスもしたくなかったが、断り続けてもしつこいため、応じた。相手に好意があったから断れなかった。しかし、好意があってもセックスしたいわけではない。その気持ちがわかってもらえないのが、つらかった。(北海道・20代女性)

 ●同意得ていなかった

 今までしっかり言葉で確認し、相手から同意を目に見える形で得た、という経験は実はありません。しかしそれだと、確実に同意できたとは言えないですね。仕事でも何でもそうですが、相手がイエスかノーかをありのままに言える、ノーと言っても嫌われることもない関係をまず作ることが大事だと思いました。(群馬県・30代男性)

 ●自分の体は自分のもの

 性的同意を知る前は応じなければいけない、断ることによって不機嫌になったりギクシャクしたりするのが嫌だと思っていた。その結果、妊娠の可能性を考えて眠れなかったり泣いたりしたこともあった。性的同意を知り、自分の体は自分のものだと考えるようになってからは断ってもいいと思えるようになった。(青森県・20代女性)

 ●やぼだと思っていた

 聞くのはやぼだと思っていたので、必ずしも同意したわけではないこともあったかもしれない。お互いにとって良くない。(鹿児島県・40代男性)

 ●「強者」の理論

 上司からセクハラを受けていますが、はっきり言葉にしたら今後処遇を悪くされるのではないか、転職しても業界内で悪い噂(うわさ)を流されるのではないか、セクハラ部門に訴えてキャリアに傷をつけたらひどい報復をされるのではないかという恐怖でやんわりとしか拒否できません。拒否しない(できない)ことを合意とみなすのはあまりにも乱暴で、立場の強い者に有利な理論です。(和歌山県・20代女性)

 ●配偶者間でも性犯罪だ

 DV被害者の支援の現場で、多くの夫婦間性暴力の話を聞く。「拒否すると暴力を振るったり、怒鳴ったりする」「NOと言えばますますひどくなるので、じっと耐えている」等。夫はもちろん、妻の側もそれが性暴力でありDVだと気づいていなかったりする。刑法改正にあたり、同意のない性行為は、配偶者間であっても性犯罪であると明記されることを強く望んでいる。(兵庫県・70代女性)

 ■そこで一言、確認を

 女性側が明確に同意していないのに、男性は同意を得たと思い込んでしまう――。アンケートで多かった指摘です。なぜそうなるのか。恋愛相談を受けるユニット「桃山商事」代表で、文筆業の清田隆之さん(39)に聞きました。

    ◇

 20代の頃、苦い経験があります。ナンパした女性と互いに酔っていい雰囲気に。迫ると、「付き合ってないから」とかわされたものの、収まりがつかなくて「いいじゃん」と粘り、行為になだれ込んだ。欲望の赴くままに振る舞ってしまったと反省しています。

 多くの男性はセックスを、「女性にお許しをもらい、させていただくもの」と思っているはず。ただ、それを言葉で確認するプロセスは圧倒的に軽視してきました。

 男性にとって、性行為に至るには長い階段があります。相手から個人として認識してもらえたら1段上り、冗談を言って笑ってくれたら1段、一緒に食事をしたらもう1段……と細かなステップを刻み、例えば「ボディータッチがあった」「家に入れてもらえた」という段階はもはやゴール目前。

 そこで一言確認したらいいのに、しない。女性があいづちと愛想笑いをしているだけでOKのサインと思い込んでしまう。

 同意をおざなりにする根本にあるのは、人権意識の低さです。男性も自分の人権が抑圧されるのに慣れっこで、他者を不可侵な存在ととらえきれないのでは。男女の非対称性もあります。圧倒的な体格差や、挿入される側が抱く身体的恐怖への想像力が欠けているのでしょう。

 性的同意は「するか、しないか」では終わりません。懸念や不安を伝え合い、違和感を抱いたら途中でも即時撤退の覚悟を持ちつつ、反応を見て進めるもの。対等に、敏感に、意思を確認するプロセスとして定着したらいいなと思います。(机美鈴)

 ■身構えず、声かけよう

 「性的同意」の考え方を広めたい。若い世代の発信が相次いでいます。

 「一般社団法人ちゃぶ台返し女子アクション」は2年前、学生が主体となり、性的同意を解説したハンドブック=表は抜粋=を作り、60超の大学で2万部以上配布してきました。被害者や加害者の相談先も掲載し、法人のウェブサイトからダウンロードもできます。

 早稲田大では2018年に学生団体「シャベル」ができ、約30人が活動しています。学内の掲示板に「セックスするなら同意をとろう」と大きく書いたポスターを貼り出しました。大学側には、入学時のオリエンテーションで性的同意を扱うよう要望しています。メンバーの女子学生は「大学は未成年飲酒などは指導するものの、性のことには腰が引けている。性的同意は身構えるようなものではないはず」と語ります。

 性教育ユーチューバー「シオリーヌ」こと助産師の大貫詩織さん(28)は「性的同意って何だろう?」「妊娠のしくみ」などの若い世代に向けた動画を次々とアップ。明快な語り口が人気でチャンネル登録者は10万人を突破しました。

 動画で「確認せよ、CONSENT(同意)!!」と歌う大貫さん。「日本は法律で、性行為の同意能力があるとみなす性的同意年齢を13歳と定めている。諸外国の中でも低いのに、子どもは学校で十分な性教育を受けられず、アダルトコンテンツの影響を受けている。必要な情報が伝わっていない」と話します。(机美鈴)

    *

 ■性で傷つくことのない社会に

 ◆同意のない性的言動は性暴力

 ◆自分の身体は自分のもの

 ◆対等な関係でコミュニケーション

  そのためには…

  ・聞く姿勢を身につける

  ・性の好みを話し合う

  ・アクションを起こす側が同意をもらう

  ・「これでいい? 何かしてほしいことある?」など声をかける

 ※ハンドブックから

 ■「NO言える関係?」授業で問う

 福岡県久留米市は2012年度から、毎年中学校で市民団体「NO!SHくるめ」によるデートDVに関する授業を開いています。交際2カ月の高校生カップルの寸劇も披露し、2人の気持ちの変化とその原因をグループで話し合います。

 「私は割と尽くすタイプ。メールもしょっちゅうしている」というゆいと「ゆいは気が利いてて、俺を立ててくれる」と自慢するりゅうへい。ところが、ゆいは徐々に恋人からのメールをしつこいと思い、返事をしないと怒るりゅうへいを怖いと感じるようになります……。

 講師の石本宗子さん(68)は、2人にジェンダーによる役割意識があると伝えます。その上で講師は「友達だったら、何ができる?」と問います。「話し合いを促す」という意見が出ると「それができる関係?」といい、「『嫌だ』『やめて』『おかしい』『NO』と言えない関係は対等とは言えません」と伝えます。

 授業後、性被害やSNSが絡む交友関係について生徒の相談を受けます。相談を受ける平岡靖治さん(62)は「性的同意や対等な関係というイメージがなく、『頼られているから』『見捨てられない』と思ってしまう。相手にそこをつけ込まれてしまう危うさがあります」と語ります。

 福岡県は昨年、性暴力根絶条例を制定しました。相談体制を強化し、希望する加害者には専門的治療をサポートします。被害者も加害者も生み出さないためです。22年度から全ての公立小中高校に性暴力を受けた際の助言や、加害者にならないための指導をするアドバイザーを派遣し、授業を行います。20年度から先行し約100校で実施する予定です。

 女性と人権全国ネットワークの佐藤かおり共同代表は「条例は、性暴力はあってはならないというメッセージになります。性へのゆがんだ認識は社会の中で刷り込まれます。だからこそ、学校で啓発や予防の教育に取り組むところに意味があります」と話します。(伊藤繭莉)

 ■各国で法改正「不同意は犯罪」

 「刑法は、意に反する性交のすべてを処罰するものではない」。娘に性的虐待をした父親に無罪を言い渡した昨年3月の名古屋地裁岡崎支部判決で、述べられたことです。二審で逆転有罪判決になりましたが、日本の刑法についてはこの通りです。

 ではどういう場合に、犯罪になるのでしょうか。「暴行・脅迫」を用いた場合は、強制性交罪。相手の「心神喪失」や「抗拒不能」に乗じた場合は、準強制性交罪になります。「準」とつきますが法定刑は同じ。薬や酒の影響、または病気や障害ゆえに、あるいは治療だとだまされるなどで、被害者の抵抗が極めて難しいときに適用されます。

 この枠組みは現行刑法ができた110年以上前から変わりません。

 一方イギリスでは、170年以上前から「同意なき性交は犯罪」と考えられてきました。2003年の性犯罪法で「同意」について、「その選択をする自由と能力」がある状態で、本人の選択により合意した場合を指すと定義しています。

 近年は、「不同意性交」を犯罪とするよう法改正する国が増えています。ドイツは相手の「認識可能な意思」に反した場合、スウェーデンは相手の積極的同意がなければ、犯罪に。オーストリアも法改正し、スペインも法改正の大詰めです。ただ、どの国でも同意の規定の仕方や実際の判断には苦心しているようです。

 日本でもし「不同意」性交罪を考えるとして、条文をどう書くのか、何をもって同意を判断するのか、たくさん議論がいりそうです。(河原理子)

 ◇回答してくれる人いるのかな、という心配は吹き飛び、終了間際まで書き込まれた真剣な記述の数々に圧倒されました。やっぱり、切実な問題なのです。

 1479の回答のうち女性が千以上。20~30代が過半数。「あなたは性的関係を結ぶにあたり、自分の意思を伝え、相手の同意を得ることは必要だと思いますか」との質問には、「必要だ」が1398(94.5%)と圧倒的でした。互いを大切にする関係がどのようなものかも回答にヒントがありました。性的同意、私も小中高生のころに知りたかったです。(河原理子)

 ◇来週22日は「一斉休校 どうしていますか」を掲載します。

 ◇アンケート「和食って?」をhttps://www.asahi.com/opinion/forumで実施中です。ご意見やご提案はasahi_forum@asahi.comメールするへ。

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