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 国民の代表である国会議員には、重い政治的、道義的責任がある。疑惑が報じられて約5カ月、公設秘書の刑事責任が問われる事態となっても、説明責任を果たせないようなら、自ら議員の職を辞するほかあるまい。

 昨夏の参院選広島選挙区で初当選した自民党の河井案里氏の選挙運動をめぐり、案里氏と夫で前法相の克行衆院議員のそれぞれの秘書が、車上運動員に法定上限を超える報酬を支払った公職選挙法違反(買収)の罪で起訴された。

 案里氏は改選数2の広島選挙区の2人目の公認候補として、党本部主導で擁立された。立候補表明から投開票まで4カ月しかないなか、党本部からもう1人の候補者への10倍にあたる1億5千万円の政治資金を受け取り、物量作戦を展開した。

 この選挙運動で主導的な役割を果たしたのは克行氏とされる。朝日新聞が入手した陣営のLINE(ライン)のやりとりの画像からは、克行氏が広報車の走行ルートや集会の開催まで、事細かく指示していた様子がうかがえる。違法な報酬支払いに克行氏は関わりがないのか、他に違法性を疑われる事案はないのか、捜査当局は全容解明に全力を尽くしてほしい。

 広島地検は案里氏の秘書について、公判を迅速に進める「百日裁判」を申し立てた。禁錮刑以上が確定し、連座制が適用されれば、案里氏の当選は無効になり失職する。

 まさに議員の身分に直結する重大な局面なのに、夫妻はそれぞれ、わずか数行の「お詫(わ)び」のコメントを出しただけで、公の場での説明はなかった。「刑事裁判の行方を注視したい」(案里氏)、「事実関係や刑事責任は裁判において明らかになる」(克行氏)とは、他人事すぎる。

 説明責任から逃げ回ったまま、国会でまともな議員活動ができるとは思えない。朝日新聞の先日の世論調査では、夫妻は責任をとって議員を辞職するべきだとの回答が70%に達した。政治に不可欠な国民の信頼という支えも既に失われているのではないか。

 克行氏は疑惑が発覚して辞任するまで、法務行政をつかさどる法務省のトップだった。その政治責任の重さを自覚するなら、案里氏とともに議員の職を辞すべきだ。

 案里氏を擁立し、その選挙戦を全面支援した安倍首相と自民党執行部の責任も重い。夫妻に説明責任を果たすよう求めることもなく、このまま本人任せを続けることは許されない。夫妻が自ら進退を判断できないのであれば、政治的なけじめを求めるのが党の役割だ。

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