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 地球温暖化対策の国際ルール・パリ協定にもとづき、政府は温室効果ガスの国別削減目標を国連に再提出した。

 5年前に決めた数値に据え置かれ、気候危機対策の国際的な機運に水を差すような内容だ。安倍政権は目標の引き上げを真剣に検討しなければならない。

 パリ協定は「産業革命以降の気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えること」をめざしている。各国が自主的に目標を決め、温室効果ガスを削減していくのが基本だ。

 ただ、従来の目標をすべての国が達成しても、気温上昇は今世紀末に3度に達してしまう。すでに異常気象や自然災害が各地で多発しており、国連は各国に対し、目標を引き上げて再提出するよう求めてきた。

 再提出したのは日本が6カ国目で、主要排出国としては先陣となる。だが、肝心の目標数値は従来の「2030年度に13年度比で26%削減」を見直さなかった。パリ協定の努力目標の実現に不可欠な「10年比で45%削減」に遠く及ばない。

 政府は「さらなる削減努力を追求する」と強調するが、温暖化対策に熱心な企業・自治体の連合やNGOから失望の声が相次いだのは当然だろう。

 期限の2月を過ぎたとはいえ、世界が新型コロナウイルス対策に追われるさなかに、国連の要請を拒むような目標の再提出を急ぐ必要があったのか。

 たとえば欧州連合(EU)はいま、「1990年比で40%削減」という従来の目標を50~55%に上げようと調整に努めている。これは日本の目標を大きく上回る水準で、EU各国の危機感の表れといえよう。

 気候危機の深刻化を避けられるかどうかは、これからの10年間が勝負だ。小泉環境相は「意欲的で野心的な数値をめざす」としている。11月の予定だった第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が、新型コロナウイルスの感染拡大で来年に延期されたのを機に、目標を引き上げるため関係各省で検討を急いでもらいたい。

 まずは年内に見直す地球温暖化対策計画で思い切った目標を掲げ、来年、それを実現できるようにエネルギー基本計画を改定する。従来の政策決定プロセスにこだわらず、そんな大胆な姿勢で取り組むべきだ。

 もちろん、日本だけが前向きでも効果はあがらない。中国やインド、ロシアなど上位排出国の動きは鈍く、2位の米国はパリ協定からの離脱を決めている。これら大国の行動なくして気候危機は乗り切れない。

 日本とEUが足並みをそろえて大国に圧力をかけ、世界を引っ張ることが求められる。

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