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 先の大戦以来、核兵器は人類の重大な脅威である。その広がりを防ぐための国際取り決めである核不拡散条約が、ことしで発効から半世紀を迎えた。

 今月末から条約を論じるはずだった「再検討会議」は残念ながら、延期になった。会場の国連本部を抱えるニューヨークがコロナ禍に覆われている今、やむをえまい。

 時期の見通しは立たないが、開会にこぎつけた際には、切迫する核の危機を少しでも改善するよう、実のある論議をする責務が国際社会にある。

 英語の略称でNPTと呼ばれる条約は、当初から矛盾をはらんできた。米国、ロシアなど5大国だけに核保有を認める不平等さをはじめ、勝手に核開発に走る北朝鮮のような問題を防ぎきれずにきた。

 それでも今なお191の国や地域が加盟しており、核問題の中心的な規範である。不完全ではあってもNPTが、冷戦以降の核拡散に一定の歯止めをかけてきた効果は否定できない。

 それゆえに5年に1度の再検討会議は、国際社会が核廃絶に向けた歩みを点検する場として重要な役割を果たしてきた。広島・長崎原爆の投下から75年でもある今回は、日本の被爆者代表が核の非人道性を訴える貴重な機会にもなるはずだった。

 会議が延期になっても、とりわけ世界の核兵器の9割をもつ米ロは、直ちに核軍縮体制を立て直す責任がある。最低でも、来年で期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)延長交渉を急がねばならない。

 米国は、中国も入った核軍縮枠組みが必要だと主張する。核戦力増強の動きをみせる中国の問題を見過ごせないのは確かだ。しかし、米ロが桁違いで核を抱える現状を変えないままでは、正当性を欠く。

 人工知能(AI)などの技術革新や、新型ミサイルの開発競争なども進み、安全保障環境は複雑さを増している。だが、それを口実に核大国が軍拡に傾くのは無責任であり、危うい。

 NPTの下で、核軍縮交渉の義務を果たそうとしない核大国の姿に業を煮やした国々が結んだのが、核兵器禁止条約だ。それなのに核保有国は核禁条約反対の一点だけは足並みをそろえ、非核国との溝が深まる。

 戦争被爆国である日本の政府は「橋渡し役」を果たすといいながらも、存在感を示せていない。核禁条約に背を向ける姿勢を改めて、新STARTの延長など、今すぐ可能な軍縮への具体策を要求すべきだ。

 人類がウイルスという共通の脅威に立ち向かう今こそ、互いに核で脅し合うことの空虚さを自覚しなくてはならない。

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