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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、安倍首相が改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を出すことになった。対象地域は東京、大阪、福岡など7都府県で、期間は1カ月の見通しだ。

 宣言が出れば、その地域の知事の権限と判断で、▽学校、劇場、百貨店などに対する使用制限の要請・指示▽臨時の病院開設のための土地の強制使用▽医薬品や医療機器の販売の要請・収用――などができるようになる。外出の自粛要請は各地で行われてきたが、今後は法的な裏づけがあるものとなる。

 行動の自由や私権を制限する措置だ。宣言に踏み切るかどうか、科学的知見を踏まえた慎重な判断が求められ、政府も「伝家の宝刀」という言葉を使って抑制的な姿勢を見せてきた。だが欧米を中心に爆発的な流行拡大が起こり、日本でも感染者が増えて医療現場が崩壊する恐れが現実味を帯びている。

 政府と各自治体に課せられた最大の使命のひとつが、この医療水準の維持・存続だ。

 重症患者の入院先を確保するため、東京都は症状の軽い入院患者を用意したホテルに移すなどの措置を近日中にとる。厚生労働省が方針を示してから1カ月余。動きが鈍かったとの批判は免れないが、経緯の検証は今後の課題として、当面は態勢の構築に取り組んでほしい。

 一般病院での患者受け入れ、院内感染を防ぐ諸装備の手配、人工呼吸器の増産と要員の準備など、課題は山積している。同時にコロナ関連以外で治療を要する患者に影響が出ることは避けなければならない。特措法で付与される力を上手に使い、医療機関の役割分担を明確にして対応することが求められる。

 宣言によって市民が危機意識を共有し、現下の状況に向き合うのは大事だが、一方で社会不安を招くようなことがあってはならない。3月下旬に東京都の小池百合子知事が週末や夜間の外出自粛を呼びかけた際は、食料品の買い占め行為などが起きた。生活に欠かせぬ物資は供給され、社会サービスは維持されるというメッセージをしっかり打ちだし、人々を安心させるのは政治の重要な責務だ。

 今後どのような対策を講じていく用意があるのか、コロナ禍で苦境にある個人の生活や企業活動をどう支えるか。

 首相や知事はビジョンを明確に語り、社会の理解と合意をとりつける必要がある。強い表現や聞こえの良い言葉を並べるだけでは納得させることはできない。情報を適切に公開し、政治家の責任と覚悟に裏打ちされた施策を示すことによって初めて、宣言は意味をもつ。

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