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 もはや実現困難な辺野古移設に固執するのはやめ、普天間の危険性除去という原点に立ち返って、日米両政府と沖縄県で打開策を協議すべきだ――。

 在沖米軍基地の整理縮小をテーマに県が設けた有識者会議が先月末、そんな提言をまとめ、玉城デニー知事に提出した。

 元防衛官僚で安全保障・危機管理担当の内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏をトップに、県内外の7人の専門家が昨年5月から議論を重ねてきた。

 単に辺野古移設の行き詰まりを指摘するだけではなく、安全保障環境の変化や米軍の戦略見直しを踏まえた日本本土や海外への海兵隊の分散、さらにアジア太平洋における「地域協力ネットワークのハブ(結節点)」という沖縄の将来像まで掲げたのが特徴である。

 「辺野古ノー」の民意が繰り返し示されたにもかかわらず、政府は埋め立てを強行し続けている。しかし、軟弱地盤の発覚によって、技術的にも費用の面からも展望が失われたことは、提言にあるとおりだ。政府はこの現実を率直に認め、日米両政府と沖縄県が関わる専門家会合設置という提案を真摯(しんし)に検討すべきではないか。

 近年の安全保障環境について、提言は特に中国のミサイル能力の向上に着目している。地理的に近い沖縄への米軍の集中はリスクであり、海兵隊はむしろ本土の自衛隊基地、加えてアジア太平洋の各地に分散させるのが軍事戦略的にも理にかなっていると指摘した。

 もちろん、本土に移すには、受け入れ側の理解と協力という高いハードルもある。提言は「基地負担のあり方を日本全体で議論し見直す気運を高めていくべきだ」としている。安全保障上、米軍の存在が重要だとしても、沖縄に過重な負担を負わせたままでいいのか。この提言に向き合うべきは政府だけではない。本土の自治体や住民も無関心であってはならない。

 中国の軍拡や強引な海洋進出などで、この地域の不安定さが増しているのは事実だ。しかし、軍事的な備え、抑止力の強化だけで乗り切れるものではあるまい。緊張緩和や信頼醸成の取り組みを伴ってこそ安全保障の確実性は高まる。

 提言は、中国や東南アジアとの交易の中継地として栄えた歴史を踏まえ、沖縄がその役割を担う地域協力のハブになるべきだとして、各国の研究者らによる定期会合の開催や、その拠点となる研究機関の創設などを具体的に打ち出した。

 沖縄を米中、日中の対立の「最前線」から、日本とアジアの「架け橋」へ。この提起をしっかりと受け止めたい。